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原子力離れ大学に不安(2011.9.9)

2011年9月9日 福井新聞

東日本大震災による福島第一原発事故で原発や原子力エネルギーに対する逆風が強まる中、福井大、福井工大では原子力の将来に対する不安から志願者の減少に対する不安が出ている。学生の原子力離れの背景として、事故後の管前首相の発言もあると指摘する声もある。
福井大附属国際原子力工学研究所は本年度敦賀市に移転、来年度から原子力の技術者・研究者を本格養成する方針だ。しかし、工学研究科博士前期課程原子力・エネルギー安全工学専攻の推薦入試の志願者は、前年の27人から3分の2の18人に減り、一般入試の志願者も13人から7人と激減した。
同研究所で学ぶ大学院生が30人を超えると予想していただけに、竹田敏一所長は「ある程度の志願者減は予想できたが、ここまでとは・・・。複数の大学院生から『将来、原子力の仕事を続けることができるのでしょうか』との声も聞く」と肩を落とす。大きな要因に管前首相の発言があると指摘する。
管前首相は震災後の5月、中部電力に浜岡原発の停止を要請。エネルギー基本計画で原発重視の方向を転換する意向を示し、核燃料サイクルの見直しにも言及した。7月には「脱原発」を私見として語るなど、国のトップとして原子力関係者を右往左往させた。
「原子力はこれまで将来のエネルギー源として考えられてきた。過去の経緯を踏まえた上で『いらない』というのであれば脱原発、卒原発はあり得る。事故があったからいらないでは考えが浅はか」。温厚な同所長が珍しく声を荒らげる。
福島第一原発事故を受け、同研究所は「原子力防災・同研究所は「原子力防災・危機管理分野(学科)」を新設し、△シビアアクシデント(過酷事故)評価△耐震・耐津波△災害発生のリスクの評価△危機管理学、原発の耐震・耐津波、危機管理-などを研究することを決めた。「事故が起きた今こそ、優秀な人材が求められている。廃炉1つをとっても数十年のスパン。原発イコール危険でなく、プラントの後処理や安全な原発の構築、新たな安全指針の策定といった視点で原子力行政を進めてほしい」と国に注文する。
一方、福井工大の原子力技術応用工学科には昨年度、推薦と一般合わせ60人の出願があり53人が合格、34人が入学した。同大入試広報課の小原正豊課長は「今年は若干減ると予測している」とし、事故よりも原子力を取り巻く政治情勢に起因する将来不安が強いとの見方を示す。同学科は原子力と放射線の両方を学べるが、同課長は「原子力分野の人材が不足しているとされる中でも、放射線を学びたいとする学生が増えるだろう」と話す。
敦賀市で12日福井大など全国14大学が参加する国際原子力人材育成大学連合ネット主催の「第1回原子力道場・全国大会inつるが」が開幕する。当初の予定は3月だったが、震災のために延期になったいた。3月時点では約50人の参加を見込んでいたが、現時点で約40人の参加にとどまっている。
「年度が変わったこともあるが、事故の影響で原子力の研究を断念した学生もいるだろう」。大会を運営する福井大大学院の桑水流理教授は、学生の原子力離れを懸念している。

│ 2011年9月9日 │
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