2011年9月7日 福井新聞
東京電力福島第1原発の事故を受け注目が集まる自然エネルギー。その中でも太陽光を、夜も曇天もない宇宙で集めてレーザーに変え、地上に送る研究に取り組んでいる。24時間発電できることから原発と同様、ベース電源の役割を担うことが可能。「人類が幸せになれるようなエネルギー供給のスキームを提案したい」と言う。
構想では、地球から3万6千キロ離れた静止軌道上に集光プラントを建設。太陽光をレーザーに変え、地球の海上に建設されたプラントに送る。海上プラントは太陽光パネルを備え、24時間降り注ぐ巨大な光の柱を受け発電を行う仕組みだ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2030年ごろをめどに、100万キロワット級のシステムの実用化を目標にしている。日本原電敦賀原発2号機(116万キロワット)に匹敵する出力だ。
研究はJAXAと共同で2009年に開始。実証装置は既に2代目で、太陽光のレーザーへの変換効率約5%にこぎ着けた。目標の20%にはまだ遠いが、変換の心臓部である透明セラミックは大型化のめどが立っており「障害は少ない」と自信を見せる。
原子力・エネルギー安全工学専攻に籍を置く。福島の事故を受け「人類は危険な『火』をいろりなどで管理し繁栄を築いた。原子力も工学的には安全に管理可能だった」と、原発の安全面に十分なコストを掛けられなかった現実を残念がる。
宇宙太陽光は無尽蔵でクリーン、安定した夢のエネルギー。実はレーザー以外にも、マイクロ波にして地上に送る方法がありJAXAが16年までにどちらが有効か判断するのだという。「レーザー方式は海上プラントの大きさが10分の1で済む。小型で地球上どこにでもエネルギーが供給できる」と、人類への利点を強調した。福井市大願寺1丁目、52歳。