2011年9月6日 福井新聞
子どもたちの理科離れが叫ばれる中、小中学校での理科教育の指導向上へ、専門的な力を備えた「コアサイエンスティーチャー(CST)」を育てるプログラムが県内で進められている。プログラムを受講している現職教員は、業務の合間を縫って大学や博物館などの公開講座を受けスキルを磨いている。一方で、小学校教諭の理科指導への苦手意識が浮彫りとなり、専門家からは「まず教員が理科を楽しむことが必要」との指摘が上がっている。
CST養成プログラムは、理科教育指導の質の高い教員を増やそうと、科学技術振興機構が2009年度から進めている。現在は全国14都道府県で実施されており、本県は福井大と県教委が連携して10年度から本格的に実施している。実務経験7年以上の上級には、小学校教諭4人を含む現職15人が取り組んでいる。
1~5年かけて大学や博物館などの講座を受けてポイントを積算し、県の認定委員会から認定を受ける。認定されたCSTは、教員向けの研修会や教材開発で中心的な役割を果たし、地域の底上げを図る役割を担う。
科学技術振興機構が2008年に全国の公立小学校教諭935人に行った「小学校理科教育実態調査」によると、約半数が理科指導を「苦手」「やや苦手」と回答。苦手意識を持ちながら教壇に立っている実態が浮き彫りとなった。
CST企画運営事務局の中田隆二・福井大教育地域科学部教授は「子どもたちの理科離れを防ぐにはまず、教員を含め小学校での充実が必要だ」と指摘する。早ければ来年度にも数人を現場で活動させたいとするが、実務が忙しく不透明な情勢。「時間をやりくりして自分が学ぶだけでなく、他教諭にも伝えることができる力を身に付けてほしい」と求めた。
CST養成を推進するため、同事務局は県内を7地域に分け支援拠点となる小学校を指定している。坂井地区の拠点となっている春江小でこのほど、「理科実験講習会」が行われた。坂井、あわら両市の10小学校の教諭31人が参加。講師は、CSTプログラムを受講している県教育研究所の冨島修司研究員が務めた。
新学習指導要領に盛り込まれた小学3年の「風やゴムで動く」がテーマ。冨島研究員は、教材として使うおもちゃ作りを指導した。
牛乳パックと輪ゴムを使った「ジャンプするヘビ」、かき氷用のカップを羽根にして横からの風を受けて走る「サボニウス型風力カー」作りなどが行われた。
輪ゴムの力で箱から飛び出したり、風を受けて車が走ったりすると、参加教諭から「わー」と歓声が上がり、楽しんでいる様子が見られた。
兵庫小で小学4年を受け持つ牧野由紀子教諭は、「子どもたちが日常生活の中で知っている事実を学習し、納得させることが重要。教材つくりや授業の手法などをCSTを中心に広めてほしい」期待を寄せた。