2011年6月12日 福井新聞
「絵の中に何が見える?どんなことが起こっているかな?」。芸術作品をめぐる対話を通して、子どもたちが自分で考え、自分の言葉で表現する力や創造力を磨いていく―。美術教育の可能性を広げようと、対話による鑑賞授業の実践や、学校と美術館の連携などの取り組みが県内で動きだしています。対話型の鑑賞は、ニューヨーク近代美術館のキュレーター(学芸員)によって、美術館での社会教育の一環として始まったとされます。「日本には1990年ごろ紹介され、美術館などに影響を与えた」と、福井大教育地域科学部准教授の濱口由美さんは説明します。「美術館で、絵よりもキャプションや解説を見ている時間が長かったりするでしょう。作品の解釈ではなく、鑑賞が主体的に価値を見いだすことが大切」と話します。濱口さん自身、徳島県で長年小学校の教員を務め、鑑賞を含めた美術教育を研究・実践してきました。昨年、福井大に赴任し、学生と共同で鑑賞学習の教材を作る授業などを行っています。「創造と想像を養うのが美術。各教科の土台になっていくとうれしい」と濱口さん。学力重視に振れる時代、点数やランク付けに縁のない科目にも、子どもたちの可能性は眠っています。