医学部産科婦人科学 吉田 好雄教授、高エネルギー医学研究センター 岡沢 秀彦教授らの研究チームが、子宮体がんで黄体ホルモン療法を受ける患者の治療効果をエストロゲン評価方法(FES)を用いた陽電子放射断層撮影法(PET)で画像診断する方法を開発し、1月30日、記者会見を行いました。
子宮体がん患者は、ここ 20 年で 4 倍近くに増え、婦人科では最も多いがんです。多くの場合、子宮全摘術により、妊娠をあきらめなければなりませんが、早期の場合は、子宮を摘出せずにホルモン療法などを行い、妊娠の可能性を残す治療法がとられます。
FES-PET 検査は、女性ホルモンの1つであるエストロゲンの受容体に集まる極微量の放射性薬剤「18F-FES」を体内に投与し、PETで断層撮影することにより、検査した部位にどれくらいエストロゲン受容体があるかを診断します。
本学では産婦人科と高エネルギー医学研究センターが共同で、このPET検査によるエストロゲン受容体評価法を世界で初めて子宮体がんに応用することに成功しました。これまでは治療効果を確認するため、少なくとも3回以上は患者さんの検体を採取する必要があり、子宮内を傷つけるリスクやその前後に投薬を中止する必要がありました。今回の診断法では、最初の診断時の採取のみで、その後は画像診断で経過観察することができます。子宮温存の可否をこれまでより正確に、非侵襲的に診断可能となり、妊娠を希望する女性にとって、この診断法の果たす役割は大きな効果があります。
この方法による診断を初めて受けた女性が 1 月 23 日(月)、第1子の女児を出産し、1月30日に退院しました。会見に同席した患者さんは、「妊娠した時は嬉しかったけれど、再発するのではないかという不安もありました。信じていれば絶対上手くいくと思い、乗り越えました。この治療法を同じ病気を抱える方々にも知ってもらいたいです」と話しました。吉田教授は、「今後もさらに研究を続け、保険適用を目指したい」と述べました。