平成14年度医学部看護学科卒業/平成23年度医学系研究科看護学専攻修了 福井県立病院 看護師
井上 和也さん
看護師は女性の職業だというイメージが強く、男性が選びにくい職業かもしれません。それでも男性である私が看護師になろうと思ったのは、母が看護師だったこともありますが、専門性のある仕事に就きたかったからです。
漠然と学び始めた看護学でしたが、成人・老人看護学領域の酒井明子先生に出会い、学ぶ楽しさや看護の奥深さを教わったことで、看護師への思いが強くなっていきました。学生時代は同学年の男子学生は私を含め2人だけでしたが、男女関係なく楽しく過ごすことができました。性別の垣根を越える看護分野の良い特性でしょうか。
卒業以来、県立病院に勤務しています。勤務を続けながら2010年に福井大学大学院の修士課程に進み、今春、修了しました。臨床現場を経験した上で生まれた疑問について学んで視野を広げたかったことと、恩師である酒井先生のもとで再び学びたかったからです。実際、科学的・理論的な側面から基礎を学び直せたことで、看護に深みが出せるようになったように思います。
昨年3月の東日本大震災でDMAT※隊員として被災地で活動したことも、今後看護をしていく上での大きな経験になったと思います。
福島県の避難所で、原発事故による避難者の放射線量測定や他の避難所や病院との情報交換をするなどの活動を行いました。活動中に何度も起こる余震に遭って思ったのは、心がとても不安定になってしまうということです。そのような環境に身を置き続けなけれ ばならない被災者の心情を思うと、「自分には何ができたのだろう」という思いが残りました。
活動後は、災害をテーマにした勉強会に参加するなどしています。被災地で医療活動した方々との意見交換を通して、今後自分は何をしていけばよいのかを考えています。
※ DMAT:「災害急性期に活動できる機動性を持った トレーニングを受けた医療チーム」と定義される、災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team)
現在は、集中治療室で手術後や急性期の患者さんを担当しています。疾患などの部分的なところだけではな く、患者さん全体を看るよう心がけています。
在学中はなんとなく学んできたことでも、臨床の場に立ってみると「もっと深く学んでおけばよかった」と思うことが多々あります。在学生の皆さんも実習や試験をこなすだけで大変かもしれませんが、自分とは違う考え方を持った人たちと積極的に交流し、学びに活かしてほしいと思います。さまざまな角度でものごとを見ることができれば、社会人になったときに深みのある仕事をする助けになるかもしれないからです。