昭和60年度 福井医科大学(現:福井大学医学部医学科) 卒業/福井県済生会病院 女性診療センター 産婦人科部長
細川 久美子さん
福井医科大学が新設された1980年の入学、1期生です。家族が病気がちだったことが、医学の道を志した動機です。高校の先生から「1期生なら、好きなことが出来るのでは?」と言われ、伝統を自分たちで作っていくことに魅力を感じ受験しました。新入生102名のうち、女子学生は12名、女性医師は今よりずっと少ない時代でした。
私たちはいろいろなことが変化した世代です。大学入試は現在のセンター試験につながる共通一次試験の2年目、医師国家試験は年に2回だったのが前年から1回になりました。外部からの大きな変化を受け止めているうちに、どんな状況にも柔軟に対応する力が身に付いたように思います。
入学して最初に受けた講義は、福井医科大学にとっても初講義でした。物理の授業だったのですが、先生が冒頭で万葉集にある額田王の歌「熟田津(にきたつ)に 船乗りせむと 月待てば 潮もかなひぬ 今は漕ぎ出でな」を朗々と詠じられました。「今からあなたたちは大海へ船出するのだ」ということを歌で伝えたのです。言葉、音の持つ力の強さを感じた、非常に印象深い出来事でした。
バスケット部で活動していましたが、こちらも1年目は体育館もないし、女子が参加できる大会もなくて。2年次に女子部員が集まり練習開始。西医体に働きかけ、ようやく4年次にオープン参加が実現しました。この時の仲間とは今でも定期的に「女子会」をしています。
お産はひとつひとつに出会いがあり、ドラマがあります。産婦人科は「おめでとう」といえる唯一の診療科でもあります。人工授精に携わったときには何年経ってもお子さんの成長が気になったり、人の人生に深く関わっていることを実感します。
福井県済生会病院の女性診療センターは、女性のみの待合室や産婦人科の名称をあえて表示しない診察室など、女性が安心して診療できる仕組みを整えています。また、性犯罪や暴力を受けた被害者のケアを行う「性暴力救済センター・ふくい」(通称ひなぎく)での活動も行っており、女性医師としての社会的な使命として関わっていきたいと思っています。
学生の皆さんには、もっと大学の外へ飛び出して欲しいと思います。医療に関わるためにはどんな人ともきちんと向き合う必要があります。直接会って対話をすることで、相手を本当に知ることができ、自分をアピールするチャンスにもなります。いろいろな分野でパイオニアとして、新しい道を切り拓いて行っていただきたいと思いますね。