平成19年度教育地域科学部学校教育課程 芸術・保健体育コース音楽教育サブコース卒業/ピアニスト
加藤 俊裕さん
今年の春、ドイツ・エッセンのフォルクヴァンク芸術大学修士課程プロフェッショナルパフォーマンスコースのピアノ専攻を修了しました。一日の大半を練習に費やし、大学でのクラスコンサートやドイツ国内での演奏会に出演しました。帰国した際は福井大学の公開講座など、たびたび演奏の機会をいただき、先月にはハーモニーホールふくいでソロリサイタルを開くことができました。音楽活動が中心の生活でしたが、合間を縫って、友人と遊びにいったり、旅行したりといった楽しみも持っていました。いつも新鮮に音楽と向き合うためにとても大切な時間です。
ピアノは保育園に通っているころから習っていましたが、本格的に練習を始めたのは高校生になってからです。福井大学に入学してみると、音大とは違い、教職の授業も多く理想と現実のギャップもありましたが、先生や友人たちと関わっていく中で、教職科目への興味や楽しみも見出せました。総合的にいろいろな分野を学べたのは自分の音楽にもつながっていると感じています。学生時代の先生や友人とは今も交流がありますし、今後も末永くお付き合いしていきたい素敵な方々ばかりです。
自分にとって、初めて福井以外で生活することは、色々なことが手探りで、何が不安なのかもわからないくらいすべてのことが不安でした。今では、全くわからなかったドイツ語も、生活する分には問題なく理解して話せるようになりました。改めて感じるのは、コミュニケーションは実は言葉ではない面が多々あるということです。いざ自由に語学をあやつれるようになったとき、話の内容が薄かったり、人を不快にさせるコミュニケーションしかできない人間ではどうしようもないということです。まず自分の言葉でしっかりコミュニケーションできる人間であること、自信をもって自分を提示できることが大前提だとつくづく感じます。語学はそこから人との関係を発展させていくためのツールだと思います。
音楽家という一見華やかに見えて実は生計をたてるのが難しい世界にいると、仕事をしてお金を稼いで当たり前の生活をするという「普通」のことが何物にも代えがたく素晴らしいことであると改めて感じます。だからこそ普通であるところから逸れるのを恐れないで、自分の気持ちに正直に、やりたいことに挑戦する強さを持ってほしいと思います。行動した人にしか見えない世界があります。