昭和61年度 福井医科大学(現:福井大学)医学科 卒業
竹谷 英之さん
東京大学医科学研究所は、1892年、北里柴三郎博士らによって設立された伝染病研究所を前身とし、1967年に、がん、その他の特定疾患を研究する医科学研究所に改組されました。現在は、東京大学附属の研究所として、感染・免疫、がん・細胞増殖、基礎医科学の3部門とヒトゲノム解析、ヒト疾患モデル研究、先端医療研究の3センターと附属病院を持っています。私は、附属病院関節外科で整形外科医として、主に血友病性関節症の患者さんの治療に当たっています。
血友病は、血液凝固因子の活性が先天的に低い、または欠乏していることで、出血すると止血に時間がかかる病気です。関節内出血や皮下出血、脳内出血などあらゆる場所に自然と出血し、その出血が止まりにくくなるため、体に悪影響を与えます。、患者数は、全国に6000人程度で、それほど多くないですが、それ故に血友病性関節症の整形外科的治療とその必要性は広く認識されていないのが現状です。血友病の治療は、血液製剤(血液を固める凝固因子)を定期的に自己注射 することで、血が止まらなくなるのを防ぎます。きちんと処置を行い、必要に応じて診療を受けることで、健康な人と同じ生活を送ることができるようになってきましたが、関節内出血を繰り返し起こすと、軟骨が傷んで、機能障害を起こしてしまうことがあります。そのため、関節内出血が見られる患者さんには、定期的に通院していただき、万が一重症化した場合には、手術を行います。この傷んだ軟骨を再生できないかという研究も行っていますが、道半ばです。
大学には、2期生として入学したので、先輩は、1学年上だけでした。まだ病院もなく、のんびりとした雰囲気の中、徐々にキャンパスができていった感じでした。そんな中で行われた初めての大学祭「暁祭」で先輩たちと一緒に大学の模型を制作し、展示しました。整形外科を志したのも、仲の良い先輩がいたからです。
赴任した国立療養所福井病院(現在のレイクヒルズ美方病院)に、血友病の患者さんが多く来院されていて、診療を始めたことがこの分野に進んだきっかけです。その後、血友病性関節症を専門に診て欲しいと医科学研究所の教授に声をかけていただいたのをきっかけに、ここで関節外科を開設し、診療や手術を始めました。
私は、これ!という具体的な目標を自分で決め、そこに向かってきたというよりは、時々で出会ったものに向き合って、求められていることをこなしていくうちに、専門になったという感じです。流れに乗ったと言ってしまえばそれまでですが、節目節目で人とのつながりがきっかけとなり、自分の進む道が自然と決まっていきました。今、振り返ってみると、このような専門分野の選択もあるのではないかと思っています。