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繊維学会秋季研究発表会で若手優秀発表を受賞

大学院工学研究科 博士前期課程 繊維先端工学専攻 2年

渡辺 浩樹 さん

繊維は衣服に使われるだけではなく、新たな機能を付与することで、工業、化学分野でも最先端の技術として進化しています。大学院工学研究科 繊維先端工学専攻 繊維材料科学分野(中根 幸治教授)では、静電紡糸法で作製したナノ繊維の応用開発、高機能性繊維材料の開発、レーザー溶融静電紡糸装置の開発などを行なっています。

私たちの身の周りには石油から作られた製品が多く存在しています。しかし、石油の埋蔵量は年々減少し、近い将来、今と同じ快適な暮らしができなくなるかもかもしれません。この問題を解決するため、トウモロコシなどから得られるバイオエタノールを化学製品に転換する技術が注目されています。この転換プロセスにおいて化学反応を速め、選択的にエタノールを生産できる触媒が非常に重要になります。

通常の固体触媒は、粉体の表面で作用しますが、粉体同士でくっつき大きな粒子になるため、接触面が少ないのが難点です。そこで繊維材料を触媒に用いる方法に着目しました。繊維は単位質量あたりの表面積(比表面積)が大きく、繊維と繊維の隙間を利用すると物質の接触面が増え、触媒の環境に適しているためです。更に、物質の接触面を増やすため、下図に示す「前駆体法」を使用しました。これは有機成分と無機成分の物質を混ぜて繊維にした後に、有機成分を熱分解することで繊維内部に「穴」(約2-3 ナノメートル)を作製する方法です。有機成分のポリビニルアルコール(PVA)に無機成分のシリカ(SiO2)/酸化鉄(Fe2O3)を添加して、ナノ繊維マット(平均繊維径:426.6 ナノメートル)を作製しました。次に、500℃以上でポリビニルアルコールを取り除くと、繊維の間にたくさん「穴」が開いた、触媒に最適な無機成分だけの繊維マットを形成することができます。

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今回、このナノ繊維の形成条件を検討した結果について発表し、ポスター賞を初めて受賞することができました。これには 2つの理由があると思います。
1つ目は研究室の仲間や指導していただいた中根幸治教授の力添えが非常に大きいことです。中根教授から「ノーベル賞を受賞した人でも5分間のスピーチを30回以上練習した」と聞き、自分はもっと練習が必要だと感じました。そこで、研究室の先輩や仲間に聞いてもらい、人前で発表練習をしたことが大きな自信につながりました。
2つ目は3大学連携繊維・ファイバー工学コースに参加し、学外で切磋琢磨する仲間を持てたことです。このコースは、京都工芸繊維大学、信州大学、福井大学の学生が一緒に繊維に特化した学習をしました。他大学の学生と交流することで、自分の研究を違った視点でみることができるようになり、研究をより深く追求できたと考えています。

最後に、研究に対して的確なアドバイスや心構えを説き、自身を成長させてくださった中根教授をはじめ素材設計研究室の仲間に深く感謝いたします。

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