大学院工学研究科博士前期課程 生物応用化学専攻 1年
山脇 夢彦さん
石けんやアルコールなど私たちの身の回りにある有機化合物は、人類の歴史にわたってさまざまな形で応用され、物質の可能性を広げてきました。さらに、人類は様々な化学反応により、有用な有機化合物(薬や機能性材料)を合成しています。
良く知られている化学反応は、熱や金属の触媒を用いて行われますが、多くのエネルギーが必要であり、さらに、金属は環境に悪影響を及ぼします。
大学院工学研究科 生物有機化学研究室(吉見 泰治准教授)では、従来の金属系の触媒ではなく、光(紫外線)を用いて、物質の分子変換を行い、環境に優しく、高効率な有機反応の研究を進めています。山脇夢彦さんは、「1,4-ジシアノナフタレンと芳香環を有するアミノ酸との光誘起電子移動」を発表し、今回の受賞となりました。
私たちの研究室は光を用いて有機化合物を化学変換させる研究を行っています。今回の研究では、芳香環を有するアミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン)誘導体と1,4-ジシアノナフタレンとの光反応による化学変換を検討しました。結果として、フェニルアラニン誘導体やチロシン誘導体を1,4-ジシアノナフタレンの存在下で、紫外線を照射すると脱ベンジル化が進行してグリシン誘導体が得られるという驚くべきものでした。このような反応は世界でも知られていない、新しい反応です。また、同条件でトリプトファン誘導体の光反応を行ったところ、インドール部分へ水が付加したアルコールが得られました。これらアミノ酸誘導体の化学変換は非常に難しく、光を利用したことで初めて成功しました。
この研究成果が出るまでに、数え切れないほどの実験をし、失敗を繰り返してきました。心が折れそうな時も、自分を信じて粘り強く取り組むことで、難題を乗り越えることができました。指導教員である吉見泰治准教授をはじめ、研究室のメンバーの支えがあって達成することができ感謝しきれません。今回の受賞は私たちにとって大変光栄なことで、今後のモチベーションに大きく影響するものとなりました。これからも、1つでも多くの賞を受賞していけるよう、研究室全体で頑張っていきたいです。