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ドイツ・ドレスデン留学報告

医学部医学科5年

古川 由貴さん

IFMSAは、International Federation of Medical Students’ Associations の略で、国際医学生連盟のことをいいます。1951年に設立され、WMA(世界医師会)・WHO(世界保健機関)によって、公式に医学生を代表する国際フォーラムとして認められています。96の国と地域の120万人以上の医学生を代表する団体で、本部はフランスの世界医師会内に置かれています。   IFMSAには公衆衛生、エイズと生殖医療、難民、医学教育、臨床交換留学、基礎交換留学の6つの常設委員会があり、さまざまなプロジェクト・ワークショップが世界各国で運営されています。  古川さんは、医学部の部活動「FEAL」の留学グループに所属し、このIFMSAに参加しています。昨年4年生(2012年)の夏休みに交換留学プロジェクトでドイツのドレスデン工科大学に留学しました。

留学を決めるまで

私が留学を決めたのは、思い返せば1年生の春でした。私は他の大学を一度卒業したため、日々の勉強やアルバイトに時間を追われていると、何もしなくても4年間はすぐに過ぎていってしまうことを知っていました。「せっかく時間がある学生期間を、今度こそ無駄にはしたくはない!大学生活中に今までの自分を変える何かをしたい」と思って入学した私は、ボランティアサークルFEALの歓迎会に行き、そこで紹介された留学グループの活動に惹かれました。留学グループでは毎年数名の医学生が海外の医学生と1ヶ月間の交換留学をしており、福井へ来た留学生との交流の楽しそうな様子や、留学へ行った先輩の写真が紹介され、すぐに決意しました。

決意から留学まで

ブルガリアから来た留学生と

ブルガリアから来た留学生と

1年生で決めたものの、部活やカリキュラム、試験の日程等を考えて、4年生の夏に行くことにしました。それまでの期間は、先輩たちに留学の話を聞かせていただいたり、海外から来た留学生と交流したりしていました。1年生のころには恥ずかしくて話しかけられず、しどろもどろだった英語も、ぺらぺらとはいきませんが留学生と自分とだけで泊まりの旅行に行けるぐらいになりました。

ドイツを選んだ理由

以前、南ドイツの田舎町へ短期の語学留学をしたことがあり、ドイツ語の響き、環境、食事、建造物が気に入っていたので、また絶対にドイツへ行くという決心をしていました。また、ドイツは医学の国として有名なので、ドイツの医学を自分で見ることができるのは魅力的だと感じ、ドイツを希望しました。

研修内容

大学病院の耳鼻咽喉科・味覚と嗅覚のクリニックの研究室で、いくつかの研究に携わらせて頂きました。 35歳までの人に被験者として同意を得、健常嗅覚をもつことを確認する嗅覚識別テストの後、32本の様々な臭気物質のスティックを嗅いでもらい、それぞれの匂いの強弱や快・不快度を数字に表してもらうという一連の作業を任され、60人分のデータを集めてほしいと言われました。研究室の人や、留学生仲間、世話をしてくれている学生を集めても、10人少しにしかなりません。そこに家族も友達もいない私には、60という数が途方にも大きく感じられました。学内に研究の被験者を募集するポスターを貼ることは日常的に行われているそうなので、学生や医療スタッフが出入りする図書館、食堂、講義棟、スタッフ用ジムに作ったポスターを貼りに行ったり、私が滞在していた寮にもポスターを貼り、連絡を待つことにしました。連絡を待つ一方で、研究室に訪問しにくる見知らぬ学生やスタッフ、時には患者さんの付添いの方に突然話しかけては、つたない英語で主旨を説明し、被験者になっていただいたりもしました。私は、自分から積極的に知らない人に話しかけることには抵抗がある方でしたし、他力本願な性格でもありました。でも、それが嫌で放っておいても何も進まないし、勇気を出していろんな人に話しかけるようになりました。ポスターを見たという連絡は数人からしかこなかったので(正直言えば、無償だったのに数人でもきたことが驚きでした)、結局30人しか集めることができませんでしたが、そのデータをまとめ、この研究の共同研究者であるチェコの医師へ送るところまで参加させて頂きました。この結果は、いずれ異嗅症という疾患の研究に使われるそうです。 他、ラットの嗅球を取り出して3種類の臭気で嗅神経を刺激し、得られた活動電位をまとめるという作業をしたり、味覚について博士論文を書く学生の実験の手伝いをしたりしました。教授の計らいで、心療内科や放射線科を見せていただいたりもしました。

滞在中に感じたこと

再建されたフラウエン教会。黒いレンガは、爆撃で崩れたがれきの中から見つけ出し、元あった位置にはめ込んだもの。

再建されたフラウエン教会。黒いレンガは、爆撃で崩れたがれきの中から見つけ出し、元あった位置にはめ込んだもの。

研修では、クリニックで行われていた研究内容が面白かったので、もっと知りたいという気持ちがどんどん芽生えました。研究室では、医師の他に、学生、学生以上医師未満の人、香りの専門家、分析家など様々な人が働いていました。学生の出入りが多かったこと、学生の自主性が高かったことが特に、日本との違いだなと感じました。 渡航までに英語力に自信がなかったわけではありませんでしたが、もっと勉強してから留学に行くべきだったと思います。特に専門用語を知っておいたら、もっともっと内容の濃い研修ができたと思います。研究室のメンバーにも友達にもルームメイトも、時間を割いて説明してくれているのにその半分程度しか理解できず、そのため、何度も聞く手間もかかるし、深い話ができなかったことを本当に申し訳なく感じていました。そんな環境に1ヶ月間身を置いたことで、言語コミュニケーションの重要性を痛感しました。留学に行く前は、言葉ではなく、心でコミュニケーションはとれるものだと思っていた部分が大きかったです。しかし、旅行英会話はなんとかなっても、しっかりとしたコミュニケーションをとるためにはやはり、言葉なのだと思いました。  正直にいうと、意志疎通ができない悔しさや申し訳なさに精神的にまいってしまった期間もあり、英語を使うことが怖くなっていました。閉じこもってしまいそうになる自分に危機感を感じ、自分を奮いたたせていました。自分を信じ助けられるのは自分しかいないことが分かり、その一方で、うまく周りに甘えることの大切さも知りました。落ち込んだ話をしてしまいましたが、このことに気付けたのは、周りに家族や友人のいない、言葉も満足に通じない、外国に長い間身を置いたからこそだと思い、感謝しています。  また、ドレスデンは戦争の爆撃でほとんど壊滅し、まだ工事中の場所も多くあります。戦争の傷痕の残る街を見たこと、ベルリンを訪問したことで、暗く悲しい戦争の話から今まで耳を遠ざけてきた自分を反省し、これからは世界の動きに目を向けようと思うきっかけになりました。

留学を考えてる方へ

一度目の語学留学は約20名の日本人と行き、今回の医学留学は1人でした。どちらでもいいと思います。是非行ってほしいです。留学へ行く、ということがまず、勇気のいることだと思います。その勇気ある一歩を踏み出したことは、自分の自信につながると思います。 留学で得られるものは人それぞれで、こんな世界があるのか、こんな人々の生活があるのか、こんな考え方もあるのか、といった日本と世界との比較をしたり、私のように自分について考える時間になったり、様々だと思います。留学中はここには書ききれないいろいろなことがあり、たくさんのことを感じ、考えました。 今、福井大学では海外へ行く学生の支援をしてくださっています。私も支援金を頂き、留学費用に充てることができました。自分の目を通して世界、日本そして自分を見る。長いようで短い学生期間です。是非チャンスをつかんでください。

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