教職大学院は,教員養成・教師教育の新しい仕組みの大学院として新設され,平成20年度からスタートしました。福井大学の「教職開発専攻」では,21世紀の知識基盤社会を生きる力(リテラシー)を実現する学校づくりを担う教師の専門性開発のために,「教職専門性開発コース」と「スクールリーダー養成コース」の2つのコースを設けています。
○教職専門性開発コース
− 21世紀の学校改革を担う若い世代にプロフェッショナルな教師としての力を培う −
若い世代が,現職中核教員の協働の実践に接しながら,授業づくりや子どもたちの学習と生活の支援の取り組みを重ねることにより,授業と子どもたちの支援,そして協働の学校づくりの実践を総合的・専門的に担う教職専門性を備えた新人教員を養成するコースです。
○スクールリーダー養成コース
− 学校改革のための協働の取り組みをマネジメントするスクールリーダー −
21世紀における新しい学校づくりは,学校における教師の闊達な協働の研究・実践の展開が不可欠であり,そのための組織マネジメントの視点なしには実現しません。協働の学校づくりの経験を積み,その組織マネジメントの視点と実践力をもったスクールリーダーが不可欠となります。これまでの教師は,個々の学級経営・教科の授業づくりの専門性は問われてきましたが,こうした組織マネジメントの経験と知見は極めて乏しかったと言えます。このコースは,授業づくりと子どもたちの生活・学習支援の双方について,協働研究を進めつつ,そうした協働研究を支えるスクールリーダーとしての組織力・運営力・マネジメント能力を備えた中核的中堅教員を養成することを目的としています。
※ 修業年限は,2つのコースとも2年を原則としますが,長期履修(3年)及び1年以上の学修により所要の単位をすべて取得した場合の短期修了もこれを認めます。
− 学校拠点の長期の実践研究を軸に,
学校改革・授業改革のための教師の専門的力量と協働実践力を培う大学院 −
21世紀の知識基盤社会に生きる力を子どもたちに育むことのできる学校教育を担う中核教員の専門的力量開発を支えることがこの教職大学院の課題です。知識基盤社会において求められる力(新しい課題に対する問題解決能力,多文化状況の中でのコミュニケーション能力,協働活動とそのコミュニティを活性化させていくマネジメントと自治の能力)を実現していくためには,学習者自身が問題に立ち向かい,協働の探究活動とコミュニケーションを深めていく学習活動の積み重ねが必要となります。こうした協働の探究活動を促し支える役割,協働探究のファシリテーター・コーディネーターとしての力を培う意欲をもつ人を求めます。
アドミッションポリシーで示したような,21世紀の教育を支える教師の実践力形成のためには,それにふさわしい教員教育のデザインと組織の実現が必要となります。教員自身が探究し,コミュニケーションし,協働の実践と研究を進めていくための新しい教師の力量形成のための仕組みの実現こそが鍵となるものです。教職大学院は,そのための新しい教師教育の拠点です。
福井大学「教職開発専攻」の中心には,学校を拠点に新しい授業づくりのために教員と研究者が協働して進める実践研究が据えられています。実践と研究の分離を克服し,大学院における教員養成と研究を,学校現場が直面する課題と取り組む実践に直接結びつけます。実践研究ネットワークと結ぶことにより,学校の教員の協働研究を大学院と継続的・組織的に結びつけ,従来の校内研修の枠組みを越えて,新しい改革と研究の動きと常に密接に結びついた形で学校での協働研究を展開することができます。
大学院で研究する現職教員は中核教員ですが,そうした教員は,学校運営の中心にあるがゆえに,これまでは大学院や長期研修で学ぶことが難しかったという事情があります。学校拠点の大学院では,中核教員が大学院で学びながら実践を進めていくことができます。中核教員が協働で学びながら新しい授業づくり・学校づくりに取り組んでいくことは,教育改革にとって最大の推進力となるものです。
また,初任者や学部から進学した若い世代のストレートマスターは,協働して学び実践する教員集団に加わって長期実習を積むことによって生徒指導や学級経営について実地に学ぶとともに,21世紀の学校を支える実践力を実地に培うことができます。
― 3重の目的と特色を持つ教員養成の新しいデザイン・組織・カリキュラム −
この専攻では,教師が協働して進める授業づくりや学校づくりのマネジメントについての実践研究を,学校拠点に行います。そこでは,実践を精緻に検討・省察し,発展的に再構成していく協働研究が展開されます。そのために,学校拠点の実践研究プロジェクトをコアとするカリキュラムが,次のような視点でデザインされています。
(1)「理論と実践の融合」を実現するために
<協働実践研究プロジェクト>を核とするカリキュラム
(2)教職専門性開発を生涯にわたって支えるために
<教職専門性の4つの重点と世代のサイクルの視点> *
(3)公教育改革を支え学習のコミュニティを培うために
<改革支援システムと学び合うコミュニティ>
*<教職専門性の4つの重点と世代のサイクルの視点>でいう4つの重点とは以下のものです。
A.学習と成長を支えるファシリテーター・コーディネーターとしての実践力
B.学習の協働組織とその改革のマネジメント力
C.実践の質を不断に高め発展させていく省察・研究能力
D.公教育としての学校を担う専門職としての教員の理念と責任
「教職開発専攻」では,次の2つの授業方式を採用しています。
○学校拠点方式
福井県内に拠点として10箇所の学校と3箇所の教員研修施設を設けています。この方式では,拠点学校等の教員が入学対象となり,大学院の授業の多くがこの拠点学校等で開講されます。入学した教員は,同僚教師と協働しながら学校の実践課題に取り組むことになります。なお,学部から進学した若い世代のストレートマスターも,この拠点学校で1年間の長期インターンシップを行います。
○地域拠点方式
一方,拠点学校以外の学校に勤務する教員も,「教職開発専攻」に入学することができます。入学を希望する教員は,地域拠点方式の授業を受けることになります。福井県内の地域性を考慮し,働きながら学べる距離の2つの地域(嶺北地区は福井大学に,嶺南地区は福井県嶺南教育事務所)に地域拠点が置かれています。夏季集中講義等をのぞき,この方式で入学する教員は,この地域拠点で授業が開講されます。
[拠点学校とは次の学校等です]
福井大学教育地域科学部附属小学校・附属中学校・附属幼稚園・附属特別支援学校
福井市豊小学校
福井市至民中学校
坂井市丸岡南中学校
美浜町美浜中学校
啓新高校
福井県福井東養護学校・同分校
福井県教育研究所・福井県特別支援教育センター
福井県嶺南教育事務所
本学では,平成20年4月5日(土)に文京キャンパスのアカデミーホールで「教職開発専攻」の開講式を実施しました。
当日は,同専攻の入学者34名が参加し,梅澤教育学研究科長及び寺岡教職開発専攻長の挨拶の後,担当教員等からカリキュラムや履修方法の説明を行いました。
入学者は熱心に説明に聴き入り,高度な教職専門性の習得に向け,教職大学院一期生としての決意を新たにしていました。
【 添付ファイル 】
【 関連リンク 】