青色発光ダイオード(LED)の研究開発でノーベル物理学賞を2014年に受賞した名古屋大学大学院工学研究科 天野 浩教授の講演会を2月13日に、福井市のフェニックスプラザ大ホールで開催しました。天野教授とともに国家プロジェクトである窒化物半導体パワーデバイスの応用研究を進める本学工学研究科の葛原正明教授の招聘により実現しました。
「ノーベル賞受賞から1年-青色LEDに続く未来へのメッセージ-」と題した講演会には、公募による一般市民、学生、教員ら約1000人が参加。天野教授は、報道では知ることができなかったノーベル週間の秘話、共同受賞者の赤崎勇教授との研究開発、葛原教授との共同研究に触れ、お祝いのシャンパンを飲み過ぎて受賞記念音楽会の客席で寝込んでしまった失敗談などユーモアを交えながら披露。青色LEDの成功に欠かせない窒化ガリウムのきれいな結晶化について、赤崎教授との研究を振り返り、「本来1億円もする実験装置を300万円の予算で手作りしたが、研究室のみんなで取り組んだ作業は楽しかった。1500回以上失敗したが、必ず新しい発見があり、おもしろく感じなかったことは一度もない」と研究の醍醐味を語りました。
また最近の取組として、JICAのプロジェクトで衛生的な水の不足が深刻な途上国地域での活動を紹介、紫外線LEDを使って水に含まれる大腸菌を1分ほどで死滅させる装置を産学官連携で開発したことを説明。天野教授は「社会に役立つ技術の開発で、安全、安心の実現に貢献していきたい」と将来への意欲を語り、約90分間の講演を締めくくりました。
最後に葛原教授の進行で質疑応答、「どんな時にアイディアが浮かびますか?」という質問には、「学生のころ、青色ディスプレイを作ることが最終ゴールでした。夜遅くまで実験し、疲れ果てて寝て、目が覚めた時には、実験の新しいアイディアがたくさん出てきました。最終的な目標のイメージをずっと持ち続けることが大切です」と答えました。長時間の講演会でしたが、広い会場を埋めた聴衆は途中退席する人もほとんどなく、科学界最高の栄誉に輝いた研究者の飾らない人柄に接し、満足そうでした。