本学と日本原子力研究開発機構(JAEA)が平成18年10月3日に包括的連携協力協定を締結して今年で10年を迎えたことを記念し、原子力研究教育に関するシンポジウムを12月16日に本学アカデミーホールで開催しました。
記念講演では、児嶋眞平・福井大学元学長が、協定締結に至るまでの背景や原子力・エネルギー安全工学専攻を大学院工学研究科に設置した経緯を振り返りました。原子力に対する逆風の中でも関係各界の後押しがあったと謝意を示し、「今後も原子力機構と福井大学の連携協力を強化し、福井大学が原子力教育・研究の重要拠点に発展してほしい」とエールを送りました。
原子力機構の柳澤 務フェローは「新型炉開発と地域・大学-もんじゅ・ふげんを中心として」と題して講演。本学との共同研究の実例として、原子炉配管の壊食現象を流体力学で示した成果や高速増殖炉材料の改良による長寿命化を紹介。高速増殖炉「もんじゅ」について、「地元の応援なくして前進はない」と強調し、「安全・安心の確保や産業創出・育成を基本に取り組み、大学とは医学・教育分野を含め全学的な連携を進めたい」と今後を展望しました。
続いて、原子力機構敦賀事業本部の田中健哉・敦賀連携推進センター長が協定締結からこれまでの活動を報告。敦賀に駐在したフランス原子力・代替エネルギー庁の研究者とインターンシップを経験したフランス人元研修生から寄せられた、福井大学に感謝するビデオレターを上映しました。本学附属国際原子力工学研究所の安濃田良成所長は平成28年度に新設する工学部機械・システム工学科の原子力安全工学コースの教育研究を紹介、「30年度から敦賀キャンパスで実施する学部3、4年生の教育や大学院教育、国際連携に原子力機構のさらなる支援を」と期待を表しました。
最後に、日本原子力産業協会の服部拓也・特任フェローが「原子力人材育成の課題と展望」と題して特別講演。福島後の課題について、原子力を支える電気・電子、機械、化学等の基礎・基盤工学に関する大学教育の希薄化、夢のある将来研究プロジェクトが見当たらない現状、競合国との人材育成競争などを指摘、福井大学への期待として、「現場力を磨き、現場に即した安全文化(素養、教養)を深め、地域との交流を進めてほしい。一方で、国際感覚を磨き、アジアの人材育成のハブを目指し、福井の取り組みが原子力の地域連携モデルとなることを望む」と述べました。
本学は安全・安心社会の実現に向け、高度専門職業人の育成を行っていきます。