福井大学教育学部附属小学校は1963年に、同中学校は1964年に二の宮キャンパスに移転開校し、50数年が経とうとしています。この半世紀の間に両校は、福井県は言うに及ばず、日本を支える優れた人材を多く輩出してきました。加えて、附属学校の使命の一つである教員養成と教育実践研究活動による教員研修を通して福井県の教育振興に大きく貢献してまいりました。卒業生は様々な分野で活躍し、福井県の教育も全国で高い評価を受けています。いずれも附属学校に関わる者にとって喜ばしいことである同時に、新しい時代の教育を拓いていくという附属学校の責務に気持ちを新たにするところです。
近年、社会構造及び産業構造の転換やグローバル化に伴う学力観の見直し、少子化を克服する地域創生等、教育界には新たな課題が浮上しております。附属学校では、いち早くこの教育課題に立ち向かうべく、4つの附属学校園を統括する附属学園を設けガバナンスを強化しました。また,2017年に小学校と中学校を統合し,全国に先駆けて義務教育学校(旧小学校は前期課程,旧中学校は後期課程)を開校いたしました。
しかし、建物に目をやりますと後期課程の建物は築50年を越えて老朽化が著しく、しかも、北体育館建設に伴い校舎のスペースを失ったためかなり手狭な状態を余儀なくされました。とても知識基盤社会に立ち向かう子どもたちを培う環境とはいえず、2018年度には自己資金で中央棟建設に踏み切りました。ただし、これは資金の目途が立ったからではありません。昨今の逼迫する国家財政を受け校舎の改築要求が差し止め状態にあり、加えて、国立大学の運営費交付金は年々減少する中で、子どもの成長を願う気持ち如何としがたく、やむなくの決断でした。引き続き後期課程の校舎改築を国に働きかけてまいりますが、新しい時代に立ち向かうための設備・人員配置等の面において、財政的に対応できていない状況にあります。さらに2020年当初から始まったコロナ禍がそれに追い打ちをかけております。このような中にあっても、みなさま方のご支援を得て、福井県および日本における附属学校の存在意義を発信していきたいと考えておりますので、附属学園基金にご協力いただきますようよろしくお願い申し上げます。
一方、このような厳しい状況にあっても、グローバル社会に生きる子どもたちの資質・能力を高めるべく、大学の利点を生かした取り組みも進めております。海外との生徒間交流や、海外現職教員の研修を附属学校で行うことで、子どもたちのコミュニケーション力を高める試みもその一つです。世界にはばたこうとする子どもたちの姿は、何にも代えがたい希望です。子どもたちへの応援を重ねてお願いする次第です。
附属学園長 大山 利夫