原子力災害時の広域連携をテーマとした「平成25年度 防災・日本再生シンポジウム」を10月19日に敦賀市のきらめきみなと館で開催し、自治体の防災担当者や一般市民ら約100名が参加しました。
シンポジウムでは、東京電力福島第一原発事故直後に現場対応にあたった福島県いわき市嘱託職員の小宅 幸一氏と独立行政法人放射線医学総合研究所の富永 隆子氏に、当時の災害の状況や対応、そこから見えた課題などについてご講演いただきました。小宅氏は、地区の災害本部長として住民の避難対応に携わった経験から「物理学、社会学、心理学などあらゆる要素を念頭に置き、被害を拡大させないよう工夫を凝らす必要がある」と提言。富永氏は、医療従事者として傷病者の搬送に当たった経験を説明した上で「被ばく医療教育や医療体制の広域連携を拡充する必要がある」と今後の課題を挙げられました。
続いて、福井県敦賀市職員の小川 明氏に、市の原子力防災に関する取り組みの変遷や本学との連携について、本学医学部医学科 徳永 日呂伸助教に、東日本大震災での活動報告や県内の被ばく医療機関の分布や設備などについて講演いただきました。
その後、4名の講演者と本学附属国際原子力工学研究所の安濃田良成所長、同原子力防災・危機管理部の安田 仲宏部門長、同 泉 佳伸教授、同 大堀 道宏准教授が有田 裕二副所長をコーディネーターに、パネルディスカッションを実施。フロアの参加者から出された質問に関し、パネリストが回答していく形で、熱心な討論が行われました。4名の講師からは東日本大震災を風化させることなく、得られた経験を今後の対応に役立ててほしいという強いメッセージが出されました。
また、これまでの活動の中で地域住民から学生とのコミュニケーションの機会を希望する声が多かったことから、今回、学生による教育研究内容の発表をロビーで実施。放射線医学総合研究所のREMAT車両(緊急被ばく車両)も展示されました。参加者は学生自らが作成した原子力発電、免震・制震の仕組み、除染や廃炉方法、原子力防災訓練参加記録など幅広い研究・活動内容の説明に熱心に耳を傾けていました。
同研究所は、原子力防災・危機管理に関する教育・研究をさらに進め、その成果を社会に還元する機会を設けていきたいとしています。