本学は、福井県のご厚意で、平成29年4月、子どものこころの発達研究センターに「児童青年期こころの専門医育成部門(寄附研究部門)」を開設し、8月31日に、同センターの上田 孝典センター長、寄附研究部門教員および福井県健康福祉部の岩壁 明美企画幹の出席により、同専門医育成の研修プログラムの概要等について記者会見を行いました。
精神疾患の多くは児童青年期に発症し、児童・青年の人口のうち約20%は精神疾患・問題を抱えていると言われています。早期発見・早期治療が不可欠ですが、児童青年精神科医(児童青年精神医学学会認定医)が不足しており、福井県は平成28年度末現在では認定医ゼロの状態であり、児童青年期の心の専門医および子どものこころの問題に対応できる心理士、看護師等のコメディカル等の人材育成が急務となっています。
この度、子どものこころ専門医で日本における発達障害・愛着障害の臨床ならびに研究の権威である杉山 登志郎氏を客員教授に、豊富な臨床経験を生かし診断・治療法に携わってきた、鈴木 太准教授らを迎え、専門医等の育成に主眼をおいた教育活動のプログラムを開始しました。これまで個々の医師の判断で行われていた診断を世界保健機関(WHO)による診断基準に基づき、面接時の質問内容や評価基準などをあらかじめ設定した「構造化面接」など体系的な診断や治療スキルのトレーニングなどを組み込んだ日本初の本格的な研修プログラムです。近年増加している発達障害、被虐待児、トラウマ治療にも重点をおき、平成34年3月31日までの5年間で6名以上の「子どものこころ専門医」を育成します。
会見で杉山客員教授は、「医学部附属病院子どものこころ診療部や小児科学、精神医学と連携して、小児期・児童青年期のこころの専門医およびコ・メディカル等を育成し、県内の児童青年期精神医療の推進に貢献したい」と述べました.
引き続き、「児童青年期こころの専門医育成部門」キックオフシンポジウムが行われ、杉山客員教授と鈴木准教授が児童青年期における臨床の現状や障害の診断治療に関して講演、子どものこころの発達センターの友田 明美教授が診療部を紹介、本学の教職員のほか、県内の医師、特別支援学校教諭ら約80名が参加しました。
最後に、上田センター長が「福井県の財政支援に対し厚く御礼申し上げます。全国から強力なメンバーを迎え、同センターは『脳機能発達研究部門』『情動認知発達研究部門』『発達支援研究部門』『児童青年期こころの専門医育成部門』の4部門から成り、日本の児童青年期精神診療の夜明けは福井県からと実感しました。大学病院として教育、臨床を強化し、子どものこころの発達やその問題の診断・治療・支援にあたる人材を育成し、地域社会に還元したい」と閉会の挨拶をしました。