電磁波の未踏領域に挑む
- 遠赤外領域開発研究センター(分光、テラヘルツ)
- 谷 正彦 先生
- 研究者詳細ページ
電磁波の未踏領域に挑む
遠赤外領域開発研究センター(以下遠赤センター)は、端的に言うと電磁波を専門に研究しているところです。みなさんに身近な電磁波は、ランプや太陽光の可視光、携帯電話や電子レンジに応用されるマイクロ波、レントゲンに使われているエックス線、日焼けの原因になる紫外線などではないでしょうか。遠赤センターは、電磁波のひとつ、テラヘルツ波(遠赤外光)を研究対象にしています。テラヘルツ波は馴染みがないかもしれませんが、ビッグバンの名残である宇宙からの放射(宇宙背景放射)もテラヘルツ波ですし、現代物理の基礎となっている量子力学は物理学者プランクがテラヘルツ波の実験データをもとに導き出した放射式が出発点となりました。物理学にとってテラヘルツ波は重要な電磁波なのです。
見えないものを透視する技術
テラヘルツ波は光領域や電波領域の電磁波と比べても、エネルギーが著しく小さく、検出するのが困難だったため、未踏領域とされてきました。しかし、波長が0.1㎜から1㎜のテラヘルツ波は光の直進性と電波の特性を兼ね備え、物質に対して比較的高い透過性をもっています。エックス線のように高いエネルギーの電磁波ではないため、物質や人体を傷めることなく透過し、表には見えないものを見る技術として産業製品の非破壊検査や空港などのセキュリティ分野への応用が期待されています。
県内の織物技術との融合
テラヘルツ波のような特殊な電磁波を応用するには、偏光方向(電磁波の電場の振動の向き)を制御するワイヤグリッドという偏光フィルターが必要になります。これを使うと縦、横の2方向の偏光成分を分けて検出することが可能になり、測定の精度が高まります。ワイヤグリッドは必須の素子であるにもかかわらず、高性能で大口径の市販品は海外製品しかなく、高価なため、私は国内での供給を目指して開発を試みました。
課題となったのは、髪の毛の1/4.1/5の太さである直径わずか10数μ m( マイクロメートル= 1㎜ の1000分の1)の直径の金属ワイヤを30.50μmの間隔で、高精度に並べる技術と低価格の実現でした。これを克服したのが、福井の繊維技術です。特殊織物技術を持つ企業と協力し、十分な強度を持ちながら従来よりも低コストの金属ワイヤを使用することで課題 を解決。マイクロレベルの極めて細い金属線約2500本を直径7.5㎝のリング状の枠に収め、世界最高レベルの性能を誇るワイヤグリッドが完成しました。
テラヘルツ波の応用は21世紀の革新技術として注目を浴びています。近い将来、みなさんにとっても便利な技術となるよう、今後もセンター一丸で取り組んでいきたいと思います。
今ハマっていること★
最近はまっていることは、ラーメン食べ歩きです。出張に出た時など、おいしそうなラーメン屋を探します。おいしいラーメン屋に巡り合えたときは幸せです。左の写真のラーメン屋もお気に入りです(みれば分かりますね?)