鈴木 悠 先生

テニュア・トラック推進本部
鈴木 悠 先生

「生物ってすごい!」をものづくりに

カイコからできる絹

ネクタイやスカーフ、着物などの絹製品は保湿性に優れ、しなやかな手触りの繊細な織物で、多くの人に愛されています。絹はカイコが紬ぐ、純天然素材。そんなカイコが繭をつくるまでの不思議なメカニズムに「生物ってすごい!」と興味を惹かれました。

わずか50日のカイコの一生

カイコの時に繭を生産する

カイコの時に繭を生産する

カイコは、卵↓幼虫↓さなぎ↓成虫と約50日の一生で4回の変化をします。ゴマ粒ほどの卵から孵化し、4回脱皮を繰り返して繭を作り、繭玉の中でさなぎに変わり、羽化して成虫になります。幼虫のカイコをずっと観察していると、繭を作り出すタイミングがわかります。カイコの幼虫は繭をつくるための場所を決めると、体内の余分な体液を排出します。すると、グッと身が締り、繭を作る準備が整います。カイコの体内で、絹のもととなる物質がたくさん生産されているのです。

絹のタンパク質構造

絹は「フィブロイン」と「セリシン」と言うタンパク質からなります。繊維になる前の「液状絹」と呼ばれるゲル状の水溶液を取り出して、NMR(核磁気共鳴装置)で構造を解析しています。NMRでみると、絹のタンパク質の立体構造は水素結合で保持されていることがわかりました。この水素結合が組み変わると、引き伸ばされるように、強度のあるタンパク質へと変化していきます。液状絹がカイコの口から吐き出される直前に、繊維化へと構造の転移が起こり、口の適度な圧力と首振り運動による張力で糸として生産されます。また、カイコの体内の後方と前方にある液状絹を調べてみると、pH濃度は中性から弱酸性に変化し、カルシウムイオン濃度が上昇していることがわかっています。この変化が、繊維化の準備に関係していると仮説を立て、今後の実験で明にしたいと考えています。

天然由来は人体にやさしい

カイコが絹を生産するメカニズムが明らかになれば、上質な絹が人工的に生産できますが、謎が多く、道半ばといったところです。現在はカイコのフィブロインを溶媒で溶かし、再び繊維化させた不織布を作製し、人工血管を作る実験も進めています。
ラットにこの人工血管を移植したところ、絹は自家組織の生着が良く、血小板がつきにくいなどの結果が得られました。絹は、人工血管やその他の医療材料として有力な候補として注目されており、こうした機能性を生かした「ものづくり」も進めていきたいと考えています。

人工血管

リケジョのみなさんへ

4月に福井大学に来て、工学部では女子学生の大学院進学率が男子学生に比べ少ないと聞き、残念に思っています。工学部を選ばれたということは、科学やものづくりに興味があるということだと思います。ぜひ、大学院にも進学して興味を広げ、具現化し、将来はさまざまな研究分野で活躍してほしいと思います。

今ハマっていること★

足羽川沿いの遊歩道を犬と散歩することです。福井に来るにあたり、共同研究者の獣医さんからビーグル犬を譲ってもらいました。建物がなく川と山と空だけの景色を見るたび、良い所だな~と心が満たされます。