生活の質を維持する運動機能を守るために
- 医学部医学科 器官制御医学講座 整形外科学領域(整形外科学、膝関節・肩関節外科)
- 宮崎 剛 先生
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高齢者に多い変形性膝関節症
高齢になると「膝が痛い」と訴える方は多くいます。そのほとんどは加齢によって内側の軟骨がすり減り、O脚が進行して痛みを生じる、変形性膝関節症と呼ばれる病気です。厚労省の国民生活基礎調査によると全国民のうち2500万人が離間していると推定されています。この疾患の進行には個人差があり、同じ病期の患者さんであっても、数年後大きくその重症度が違うことがあります。女性に多く、体格指数BMIが高いほど進行しやすいことがわかっていますが、はっきりとした原因は特定されていないのが実情です。
一日の中で変化する膝関節の「ゆるみ幅」
人の関節には「あそび」部分があり、この関節の「あそび(=ゆるみ)」には個人差があります。もともとの膝関節のゆるみの大小だけでは、症状の進行度合に明確な差は見られません。同じ人でも一日の中で、朝起きたばかりと日中の生活動作を行ったあとではゆるみ幅に変化が生じます。そこで、変形性膝関節症患者に日常生活を想定した軽い運動(階段の昇降運動)を行ってもらい、その前後で膝関節のゆるみ幅を測定しました。 すると運動をした後に膝関節のゆるみが3ミリ以上大きくなる人は、それ以下の人より症状が進行しやすいことがわかりました。(この成果は米国の学術誌「Arthritis&Rheumatism(関節炎とリューマチ)」に掲載)
患者さんの暮らしを快適に
変形性膝関節症の治療は、症状の進行に合わせて、手術で矯正骨切り術を行ったり、最終的には人工関節に入れ換えるなど発症後の治療が中心です。
先の研究結果で、全ての変形性膝関節症の原因を突き止めた、というわけではありませんが、膝関節の動的な要因に着目した、今までにない着眼点が評価されたと考えています。このような小さな研究が積み重なって病気の解明に近づいていくのだと思います。私は、多くの方が悩まされている「膝の痛み」から解放され、快適な日常生活が送れるよう、研究を続けていきたいと思っています。 臨床研究成果はある日突然生まれるものではなく、それまで読んできた数多くの資料や文献、日常の診察や治療などの経験、実験などを繰り返した結果、研究のきっかけが生まれるものです。そのきっかけを基に何でも試みてみると、それがたとえ失敗だったとしても、いつかその結果が次の実験の糸口になることがあります。経験の少ない学生の皆さんは、指導してくれる先生方や先輩の話やアドバイスを聞いて、まずは実践しながら自分のオリジナルを生み出してほしいと思います。常に好奇心をもって、何事にも前向きに挑戦してください。
今ハマっていること★
海釣りを楽しんでいます。釣り上げた魚は、妻や自分で捌いておいしくいただいています。 最近初めてハモを釣り、捌くのに苦労しましたが、味は格別でした!