被災者と常に向き合い、求められる看護活動を
- 医学部看護学科 成人・老人看護学領域 (災害看護学、急性期看護)
- 酒井 明子 先生
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求められる災害看護支援
災害看護活動は、日常の看護活動とは異なり、人的・物的資源が不足する中、刻々と変化する状況に対応しながら行わなくてはなりません。これまで国内外を問わずさまざまな災害現場で、発生直後から支援活動を行ってきました。東日本大震災では、その被害の甚大さや、情報の少なさ、原子力発電所事故の影響などから看護支援の空白地帯が多くありました。医療的な側面から、日ごろから地域の中で患者と接している看護師が、果たすことのできる役割は非常に大きいと考えます。他職種と連携するコーディネート役として活躍が期待できる、災害看護支援リーダーを育成することは急務と言えます。
災害を知り、看護につなげる
災害はどれ一つとっても種類や規模、局面など同じものはなく、地震や台風などの自然災害だけでなく列車の脱線事故や航空機の墜落、原子力発電所事故など人為災害も増えてきています。
災害について、系統的に検討し、一般化することは難しいですが、「時間論」を軸にした研究を進めています。さまざまな災害現場での被災者や支援者に災害発生から急性期、復旧復興期~静穏期まで災害サイクルに沿って心理変化ラインを記載してもらい、災害時の体験や心理変化に影響する要因を語ってもらいました。この結果を基に、変化する被災者や支援者の心理状態と行動を理解し、災害時に起こる現象の共通性と個別性を確認しておくことが今後の根拠のある看護支援につながると考えます。災害から時間が経過し、復旧復興期になると表面上は落ち着いたように見えます。しかし、個々の被災者に目を向けてみると、状況は様々です。東日本大震災から2年が経過していますが、災害前のように落ち着いている人は一人もいないことが調査からわかっています。問題は、表面上は平静を保っているのに、家庭内では、深刻な状況に陥っている場合が多いということです。福井豪雨などそのほかの災害でも長期間不安を持って生活している人が少なからず存在し、長期にわたっての看護支援は不可欠です。現在、「すべての看護師は災害看護に関する知識を持つこと」とされ、行われている災害看護学の講義では、「災害直後から支援できる看護の基礎的知識を理解すること」を前提に、基本的な看護技術はもちろん、その上で災害を体系的にとらえ技術や態度、行動力を持てるよう、緊急被ばくに対する知識なども教育に取り入れていきたいと考えています。
常に災害に対する準備を
災害は、いつどこで、発生するかは誰にもわかりません。自らも被災者、支援者になりうることを常に頭において、災害時に自分がどのような行動をとるべきかを考え、そして日ごろから周囲と信頼できる人間関係を築いてほしいと思います。そして災害が起こった場合には、行動できる人間になってほしいと思います。 学生の皆さんも被災地を自分の目で見て、「命」の大切さを再認識し、災害に備えた装備と心の準備をしておいてほしいと思っています。
今ハマっていること★
今は東日本大震災の看護支援活動にどっぷりハマっています。 学生との活動では、感性の豊かさに驚かされます!