小林 基弘先生

医学部医学科
腫瘍病理学領域
小林 基弘 先生

未来の多くの患者さんを救うために

多様な機能を持つ糖鎖

糖鎖は、細胞の表面にある細胞膜に多く存在し、特に細胞のがん化や免疫応答、細菌やウィルス感染による炎症などにおいて重要な役割を演じていることがわかってきており、ここ10年くらいで急速に注目が集まっている研究分野です。私は、これまで主に胃や腸などの 慢性炎症において、細胞膜に存在している糖鎖がどのように作用しているのかを研究してきました。

炎症の進行に深く関わる糖鎖

胃粘膜に発現する2種類のO結合型糖鎖(実験医学より転載)

胃粘膜に発現する2種類のO結合型糖鎖(実験医学より転載)

血流中のリンパ球はリンパ節などの二次リンパ組織に帰り、再び血流中に出 て行くという再循環(リンパ球ホーミング)を繰り返しています。リンパ球ホーミングは、最初のステップとして、血流中のリンパ球が高内皮細静脈という特殊な血管の内腔面をコロコロと転がり、その速度を落とす反応から始まります。この反応はリンパ球上に発現しているリンパ球の接着分子であるLセレクチンに、高内皮細静脈内腔面に発現している硫酸化シアリルルイスX糖鎖がリガンドとして結合することにより引き起こされます。
自己免疫性膵炎における高内皮細静脈様血管の誘導

自己免疫性膵炎における高内皮細静脈様血管の誘導

生理的状態時だけでなく、慢性炎症においてもこのメカニズムが関与していると考えられ、私たちは、慢性ヘリコバクター(ピロリ菌)胃炎、潰瘍性大腸炎でこのリンパ球ホーミングが病態形成やその活動に関与していることを明らかにしました。また、悪性リンパ腫や一部の膵炎でも、このリンパ球ホーミングをもたらす高内皮細静脈様血管が誘導されていることを報告しました。こ のように硫酸化シアリルルイスX糖鎖は種々の慢性炎症性疾患の病態形成に関与しており、この分野におけるさらなる研究が期待されています。

病気に苦しむ多くの患者さんのために

私は、大学院生時代に血管内リンパ腫の患者さんの病理解剖を執刀したことをきっかけに、この分野の研究を始めました。血管内リンパ腫は、腫瘍細胞が血管内のみにとどまる特殊ながんで、発見や診断が難しい病気です。私は、病理医としてこのような特殊な病気を含め、多くの患者さんを救える方法を見つけていきたいと思い、研究に取り組んできました。医学研究には、未来の多くの患者さんを救える可能性があります。私はそのような夢を持った多くの仲間とともに研究をしていきたいと思っています。研究は一個人で成せるものではなく、多くの研究者とともに議論を繰り返しながら進んでいくものです。学生の皆さんには、こだわりを持って興味のある分野を深く研究すると同時に人間関係も大事にしてほしいと思います。
今後は、この腫瘍病理学領域で糖鎖と腫瘍の関係についてさらに力を入れて研究を行っていきたいと考えています。この分野に興味のある学生さんはぜひ一緒に研究に取り組みましょう!

今ハマっていること★

p10-3

7月に福井に来てからお酒と魚のあまりのおいしさに太ってしまいました…。 ダイエットのため毎日、東山運動公園で泳いでいます。昔、歌手活動していた頃の体型が目標です!