上澤 悦子 先生

医学部看護学科
母子看護学・助産学領域
上澤悦子先生

「産むってすばらしい!」と思えるファティリティ・アウェアネス教育

  • 医学部看護学科 母子看護学・助産学領域(母子看護学・助産学、生殖看護)
  • 上澤 悦子 先生

生殖医療の限界を今から理解すること

平成24年に誕生した赤ちゃんは約103万人。そのうち、何らかの生殖医療を受けて生まれた赤ちゃんは約3万人に上ります。キャリアを積む女性の出産年齢の上昇や、小児期がんや若年期がんによる生殖機能障害により望んでも子どもを持てない男女は急激に増えています。生殖医療技術は進歩しましたが、子どもを希望し、治療を行っているカップルが子どもを授かる確率は数%から十数%です。これらの現状を10代から理解し、将来、望んだ時に健康な子どもを授かることができ、心から「産むってすばらしい!」「親になり子どもを愛したい」と思える不妊予防の視点で行うファティリティ・アウェアネス教育が、今、特に必要とされています。

あなた自身の卵、精子のこと知っていますか

胎児期から閉経までの卵胞数の推移

胎児期から閉経までの卵胞数の推移

女性の卵のもとになる原始卵胞は、図の通り、胎児時期が最も多く700万個もありますが、誕生時には200万個まで減少し、20歳ではその1/10程度の30万個、35歳では1/100の2~3万個まで減少します。毎月1個の排卵のためには1000個程度の他の卵の力が必要で、1か月ごとに約1000個ずつ卵が消滅します。卵巣に残っている卵数はアンチミューラリアンホルモンという血液検査で測ることができます。また、女性は閉経10年前から妊娠は不可能となるため、月経がある間は妊娠できるという考えは誤りです。

次に、現代男性の精液中の精子数は明治時代から比べると半減したといわれています。精子が存在しない無精子症や、精子数が少ない乏精子症の男性は推定60万人程度も存在し、あなたの精液に精子が必ず存在するとは限りません。これらの原因は様々ですが、精子にとって最適温度は34℃であり、精巣を体温以上に温めないよう、男性はぴったりした下着を着用し続けることはやめましょう。さらに、小児がんの既往がある男女、早産で誕生した女性などは、できればできるだけ早く妊娠、出産できるよう自己のライフプランを検討しましょう。妊孕性(妊娠できる・させる能力)研究は、少しずつ進んでいますが、私はこれら、既往症や生活習慣(喫煙は男女の妊孕性に大きく影響しますよ)と妊孕能の関連について研究しています。

「産むってすばらしい!」と思えるファティリティ・アウェアネス教育

現代女性にとって、結婚、出産は義務ではなく、自己決定権が保障されています。結婚・出産は特に女性にとってはリスクとなる一方、カップルで生活し、妊娠・出産・子育ての過程は女性の生理機能を満たし、女性を大きく成長させます。一方、男性は産む機能がない代わりに、母子を守る責任感である父性が発達し、男性も大きく成長します。

「子どもを産むってすばらしい!」「親になるってどんなこと?」等の教育を含めた、子どもを産みたいときに産めるための生殖に関する知識を持ち、行動できるためのファティリティ・アウェアネス教育が思春期の男女に必要であり、そのような教育プログラムも開発中です。

学生の皆さんも今からライフプランを検討し、親になることと仕事を両立させ豊かな人生を送りましょう。

今ハマっていること★

teach_kamisawa03東京都内で仕事の時、始発列車で福井発-都内で仕事-横浜近郊の自宅で夕食-新横浜-最終列車で福井に帰れます。列車内で仕事もでき、時間を有効に使えるので気に入っています。また季節感を味わえる和服が好きです。着ると、とてもよい気分転換になります。