「心」を可視化する
- 医学部組織細胞形態学 神経科学領域(分子神経解剖学、シナプス伝達)
- 深澤 有吾 先生
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「心」を生み出す「脳」
私たちの「心」はどのように生まれるのでしょう?洋の東西を問わず、心は 人類共通の興味として探求されてきましたが、技術や科学が進んだ今でも実体は謎に包まれています。喜怒哀楽や思考のように我々が意識できる「心」とそれに伴う「行動」が、脳の損傷や脳に作用する薬物に影響されることから、少なくとも「脳」が心の形成に深く関わっていることは間違いありません。そこで私たちは、脳の変化を可視化することで「心のしくみ」に迫りたいと考えています。
「脳の構造変化」を明らかに
脳には神経細胞とグリア細胞と呼ばれる脳固有の細胞が存在します。神経細胞はシナプスと呼ばれるネットワークを形成し、情報伝達を行います。グリア細胞は神経細胞を包み込むように分布して、栄養を供給したり、情報伝達を調節します。私たちは様々な観察技術を駆使して、これら細胞の構造や分子の分布を定量的に可視化し、脳内の変化をキャッチしようと試みてきました。 運動学習を課したマウスの研究では、15分間のトレーニングを1時間間隔で4回行うと、小脳の特定の場所にあるシナプスの数が半減し、さらにこの減少に先立って、情報伝達に関わる分子の分布が迅速に変化する様子を捉えました。この結果は、脳内の神経ネットワークのつなぎ換えがこれまで予想されていた以上にダイナミックに起きていることを示唆しています。この実験では シナプスの減少率と長期運動記憶の成立量(強さ)の有意な相関も見られたので、構造変化と学習記憶現象の間に密接な関連があることも分かりました。
様々な心的状況下の動物を訓練し、脳内の構造変化の様子を調べることで「心の痕跡」を捉えることが可能になると考えています。そこで現在、動物に様々な心的変化を引き起こす操作を与えてから、脳内の構造変化をくまなく可視化する方法の開発に取り組んでいます。この様な研究を通して、「心」の実体を可視化する手がかりを見つけ、「心のしくみ」を理解する道筋を創りたいと考えています。
「どうしたらできるか」を考える心を養う
現在に至る文化や技術の発展は、新しい発見や工夫の積み重ねと世代を超えた継承によるものです。これは人間のは、生物が進化の過程で獲得した「不可能を可能にする装置」なのです。この人間の脳の原動力は「心」です。特に、知らないことや出来ないことに気付き、克服したいと思う「前向きな心」です。この前向きな心の方向性と強さは人それぞれです。一人ひとりの前向きな心を育てるには小さな成功体験を少しずつ積み重ねることしかありません。今取り組んでいることに自分なりの創意工夫を凝らし、小さな成果を積み重ねたり軌道修正したりするうちに、自然に個性や可能性が広がっていくと思います。
今ハマっていること★
単身赴任なので自炊を始めました。料理はまさに実験そのもの。なかなか満足できないところまで似ています。現在研究室の立ち上げ途中で実験環境が整っていない私には良い気分験環境が整っていない私には良い気分転換になっています。