REPORT04社会福祉法人 足羽福祉会
SDGsに繋がっていた
「共に生きる」という理念
取材対象者:髙村 昌裕さん(社会福祉法人 足羽福祉会 理事長)
探究インタビュアー:増田 葉月(国際地域学部2年)
増田 足羽福祉会さんがSDGsの取り組みで大切にしていらっしゃることを教えていただけますか。
髙村 はい。私たちが2030年をゴールにした目標を掲げ具体的な行動計画をたてる、いわゆる「SDGs宣言」をして取り組みをはじめたのは今年(2022年)の春です。その計画段階で、私たちが社会福祉法人の理念や使命の実現に向けて取り組んできたことのかなりの部分が、SDGsの目標と多くの共通点がある、つまり、SDGsに繋がる部分があると気づくことができました。
増田 社会福祉制度は社会生活を送る上でハンディキャップを負った人たちに、公的な支援を行う制度ですから、誰一人取り残さないという誓いとも合致していますね。
髙村 そうなんです。福祉の対象となるのは、障がいを持つ人や、介護が必要な人、貧困問題を抱える人など、SDGsのソーシャルな部分に重なる役割があります。それに加えて私たちは、
福祉の対象者だけではなく、
そのご家族やご家族が住む地域全体を豊かにするため、
過疎やコミュニティの衰退といった課題にも
寄り添うことを意識して活動しています。
増田 いま、孤独死や老老介護の割合が高くなっているという情報もあります。コミュニティと繋がることはそういった社会問題にも対応する手段になりますか?
髙村 私たちは自治体から委託され、福井市のひとつのエリアにある地域包括支援センターの運用にも力を入れています。介護・医療・保健・福祉などの側面から高齢者を支える総合相談窓口となるセンターで、専門知識を持った職員が、高齢者が住み慣れた地域で生活できるように介護サービスや介護予防サービス、保健福祉サービス、日常生活支援などの相談に応じ、介護保険の申請窓口も担っています。
地域の民生委員さんにご協力もいただき、地域からのメッセージを受け取りやすくし、対応しやすくする試みもしています。増田さんは「認知症カフェ」って聞いたことありますか?
増田 認知症カフェ? 教えていただけますか。
髙村 認知症の方は、家の中にこもってしまう傾向にあるのですが、地域のなかに共通の集いの場を意識的に作り、みんなで楽しく過ごしましょうという試みです。当事者だけでなくご家族も一緒に。人も集まりますし情報も集まってくる。公民館や社会福祉協議会など社会福祉を支えるさまざまな団体とも連絡を取り合って、専門家に繋げる仕組みを構築していこうと。
増田 とても素晴らしい取り組みなので、もっと広く知ってもらえるといいですね。
髙村 福祉の業界の人たちは、そういう情報発信が得意ではないので、一生懸命やっているんだけれども、なかなか認知度が上がらない。学生のみなさんが参加してくれて、情報をSNSなどにアップしてくれたら、もっと知ってもらえるかも。
増田 例えば、家族が認知症だとか、
身近な人が障がいをもっているとかじゃないと
福祉の世界に触れる機会がない
というのがネックかもしれませんね。
髙村 自分の家族だとあえて言いたくないという人も多いですね。障がいがあって生きるとか、高齢となり人生の最後をどう迎えるかといった人生の価値に関するテーマが、福祉をやっているとたくさん見えてきます。それは福祉だけでは解決できない問題も多く、社会全体でどう捉えられるかがすごく大事です。まさにSDGs的に考えると、福祉以外の人と繋がって一緒に考えていくことが大切ですね。
増田 私の所属する国際地域学部には、地域の企業や自治体と連携して、実際に地域社会の課題に取り組む実践的な課題探求プロジェクト(PBL)と呼ばれる科目群があります。今年も、チームに分かれてテーマを決め、地域活性化の活動をはじめています。PBLのテーマの一つとして考えていければ私たちにも参加できるかもしれません。
髙村 ぜひ考えてみてください。そして何か一緒にできるといいですね。
増田 最後にもう一つお聞きします。足羽福祉会さんでは、介護する側、つまり職員やスタッフのサポート体制にも注力しているとお聞きしています。
髙村 はい、私どもの職員やスタッフは、3分の2が女性です。今までは、結婚や出産を機に退職する方が多かったのですが、育児休暇や介護休暇などを取りやすくしたり、職員のための託児所を設置したりして、安心して仕事を続けられる体制を整えています。現在の育児休暇取得率はほぼ100%で、経験を積んだ職員が長く働いてくれています。
増田 私も女性として、出産後の社会復帰を安心して考えられる職場が、自分のキャリア形成にも大切だと思います。
髙村 さらに、男性の働き方も変えていかないと、女性への負担が軽減されないとも思っています。福祉の仕事は、男女の賃金格差はないので、男性でも女性でも専門スキルを身に付けてステップアップしていけます。24時間365日、人を支える仕事ですから、そこを支える制度の改善を常に考えていこうと思います。
増田 今日は貴重なお話をお聞きすることができました。どうも、ありがとうございます。