REPORT02株式会社 鮮魚丸松

海からの恵みを大切にしたい。
廃棄せずに、おいしいまま届ける体制

取材対象者:五島 輝幸さん(株式会社 鮮魚丸松 代表取締役)
探究インタビュアー:河津 一加里(国際地域学部3年)

河津 御社は、鮮魚の卸売り業や問屋業、加工品の製造販売、さらには飲食店の経営、ECサイトの運営など幅広い事業を展開されていますね。
五島 市町のふるさと納税の返礼品にも参加していますよ。なぜ、さまざまな事業を紐づけして展開しているかというと、獲れた魚介、仕入れた魚介をいかに廃棄せずに、おいしくみなさんに食べていただくかをずっと考えてきたからです。
河津 ということは、自然にSDGsにつながる事業形態だった。
五島 もちろん、魚を廃棄せずに売っていければ必ず利益がついてくるという企業活動からはじまっていますが、どうしたら海からの恵みを捨てずに、おいしく食べてもらえるかを突き詰めて考えていくと、

フードロスに対する
新たな対策がとれる体制が
見えてきたんです。

河津 具体的にはどのようなことですか?
五島 近頃、水産資源は激減しています。ここ数年で漁獲高はものすごく減っていて、その分、値段は高騰。越前がには去年、おととしと高かったでしょう。越前赤ガレイの相場は5倍くらい跳ね上がった。
河津 海の環境はそんなにも変化しているんですか。
五島 そうです。また一回の漁で、同じ魚種がドカンと水揚げされるときがあります。先日はブリが大量に獲れました。でもどの船もブリしか獲れない。そうなると、今度は市場価格が低下する。売り切れないで廃棄されるものもある。そういった問題を解決するために、当社では、新たに食品加工工場を建設して、魚の細胞を壊さないテクノロジーを備えた冷凍設備を導入しました。大量に獲れた魚も、この冷凍方法で一旦冷凍して、需要に応じて解凍し商品にするという廃棄を出さない事業モデルを運用し、成果が出てきています。
河津 一般的な冷凍と何が違うのですか?
五島 液体窒素などを使って急速に凍結することで鮮度を保つ冷凍技術が発達していますが、解凍時にドリップ(水分、うま味、タンパク質などが含まれた液体)が発生しやすいんです。臭みも出るし、食感もぶにょぶにょした感じになります。それは、冷凍時に魚介の細胞内にある水分が凍ることで膨張し細胞を壊してしまうから。当社が採用した冷凍設備は、細胞内の水分が大きな氷にならない特殊な方法で冷凍するので、解凍後も刺身として調理できるほどの鮮度を保ったまま保存することが可能です。プロでも味や食感の違いがわからないくらいですよ。また、この冷凍方法ならば、最近、増殖しているアニサキスによる食中毒も防げます。
河津 フードロスの問題も、食の安全に関してもクリアにする、それによって企業の安定的な利益を追求できる。

いろんなことが
WIN-WINになる試みが
繋がっていて、すごいですね。

五島 さまざまな試しみを先回りしながら考えることが、最終的にSDGsの取り組みにも繋がってきています。河津さんも何かアイディアありませんか。
河津 解凍してもおいしい冷凍海鮮丼とかをつくったらどうでしょう。
五島 じつは、海鮮丼の開発はすでに終わっていて6月からしています。でも大学生の視点で、こういうのつくれませんかというのはどんどん教えてほしいですね。当社はけっこう自由に商品開発・生産をしているので、スタッフと一緒に楽しみながら総菜メニューなども作ってみてほしいな。
河津 女性の従業員やスタッフの方も多いですね。
五島 当社は女性も男性も基本、年齢も関係なくスキルを磨いてキャリアアップしていける体制です。役職付きの女性、販売店舗の店長もいます。部下を指導しながら責任を持ってやってくれていますよ。
河津 ジェンダー平等ですね。最新の冷凍機を活用した、フードロス・メニューの開発、ぜひコラボしてやってみたいです。今日はお忙しいなか取材にご協力いただき、ありがとうございました。