有機半導体材料が照らす
未来への挑戦
- 今林 弘毅
- IMABAYASHI Hiroki
- 工学部 助教(半導体物性)
Profile
1985年、京都府生まれ。2017年、大阪大学大学院工学研究科電気電子情報工学専攻博士課程修了。シャープ株式会社勤務後、2021年、福井大学工学部電気電子情報工学科に助教として着任。
電流のバラつきを可視化できれば
みなさんのスマートフォンの画面は液晶パネル?それとも有機ELパネル?あまり区別していない方もいると思います。液晶パネルは、パネルの裏側で光らせた白色光から、不要な色の光だけ無理やり遮断することで発色させるので、黒色の時も光が漏れ、黒の表現は難しいものでした。一方、有機ELパネルは有機材料で作られた厚さ約数十ナノメートルの薄膜が複数積み重なったもので、+とーの電極に挟まれたパネル自体が発光します。黒色もON/OFFで制御できるのでコントラストの強い色表現が可能です。
また有機材料はプラスチックのように曲げに強く、材料の工夫により新たな半導体デバイスを創出できると期待されています。
私は2021年3月の福井大学に着任する前は、企業で有機ELパネルの開発をしていました。当時、エネルギー損失を低減し、良好な発色や長寿命化を安定して実現できる製造条件を探していましたが、試作品の評価は顕微鏡での凹凸や異物観察が殆どで、特に「膜を流れる電流のバラつき」を測定出来る適切な装置が無く、基本的な物理現象を把握できないという問題を抱えていました。
ものづくりを現象から捉える
そのとき私が出会ったのは、本学の塩島謙次教授の非破壊で半導体界面を2次元評価する装置です。金属と半導体が接合された界面にレーザー光を照射し、界面の電気的特性を顕微鏡で見るかのように可視化できる画期的なものでした。
レーザー光を使い、サンプルの電気的特性を評価することができる
私は、この装置を有機ELや他の有機半導体材料の評価装置として発展させる研究をしています。薄膜の膜厚や分子配列などの電気的な不均一性を非破壊で検出できれば、これまでの原因の究明が一気に進みます。根本的にムラのできない製造法の開発につながる可能性が膨らむのです。
企業ではものづくりの課題から遡って解決を目指しますが、大学では視点を変えて現象の本質の解明から課題の解決を導き出したいと考えています。基礎的な知見の積み重ねによって、真に高い品質を追求したものづくりに貢献できると考えています。
旅行。見たことのないモノ・場所を見るのが好きです。企業勤務時、英オックスフォードへ4週間出張した際は、毎週末どこかへ飛び回っていました。