米国IEEE主催の国際会議(IMFEDK2020)において最優秀ポスター賞(Poster Award)を受賞

  • 大学院工学研究科 産業創成工学専攻 博士前期課程2年  永瀬 樹

現代社会において必要不可欠な電気エネルギーは、電圧・電流の大きさや交流・直流の形態を変えて利用されています。この電力変換において活躍するのがパワーデバイスです。シリコンパワーデバイスの性能はこれまで向上され続けてきましたが、シリコンの絶縁破壊強度では、現状よりも高耐圧かつ低損失なパワーデバイスの実現は困難になりつつあります。そこでシリコンに代わる半導体材料として窒化ガリウム(GaN)が期待されています。本学大学院工学研究科のアスバル・ジョエル・タクラ准教授の研究室では、材料特性に優れた窒化ガリウム(GaN)を用いて高電子移動度トランジスタ(HEMT)と呼ばれるパワーデバイスを試作し、その性能向上や物性理解に向けた研究を行っています。
パワーデバイスの実用化には、安全性の観点からゲート電極に電圧を印加しない状態でトランジスタに電流が流れない特性(ノーマリーオフ動作)が強く望まれます。また金属/絶縁体/半導体(Metal/Insulator/Semiconductor: MIS)が積層したMIS型のHEMTでは、絶縁膜/半導体界面の特性が非常に重要です。この問題を解決するために、ゲート電極直下の半導体の厚さを薄くする方法とゲート構造の作製段階で再び結晶成長を行う手法とを組み合わせて、良好な界面特性とノーマリーオフ動作を達成しました。高速スイッチングが可能なHEMTを用いているため、インダクタやコンデンサなどの周辺部品の小型化も可能であり、大幅な小型化と高効率化が期待できます。一連の実験結果を米国・電気電子学会が毎年主催する国際学会(IMFEDK2020 Satellite event)で発表したところ、最優秀ポスター賞(Poster Award)を受賞することができました。
最後に、お忙しい中熱心に指導してくださったアスバル准教授と、支えてくれた研究室の先輩・後輩方、実験を全面的にサポートしてくださった山本暠勇特命教授に深く感謝します。