酵母の世界
透明で白くてまるい粒。何かの生物の卵にも見えますが、“美味しさ” の秘密がここに詰まっているかもしれません。末信一朗教授と髙村映一郎助教らの研究グループが福井の特産品「へしこ」から分離した酵母菌です。へしこは、内臓等を取り除いた生のサバを糠や唐辛子などで1年ほど塩漬けにして作られる保存食です。製造過程では乳酸菌による発酵が欠かせませんが、夏の暑い時期に酵母による発酵を経ることが熟成に必須の条件です。研究グループは、この発酵過程のへしこ酵母液から酵母の分離に成功し、イタリアの特産品「バルサミコ酢」と同じ酵母Zygosaccharomyces sapaeと同定されました。
今回、「へしこから分離された酵母」として特許を取得し「製品評価技術基盤機構(nite)」で凍結保管されています。この酵母は塩濃度の高い環境下で生育できる耐塩性を有しています。へしこの酵母はこれまでの味噌の酵母とは違う風味や香りといった特徴が期待されます。試験的にこの酵母をつかった味噌を作製し、味わいを評価する官能検査を行ったところ、他の味噌と比較しても香ばしさやまろやかな甘味などの評価を得ました。美味しさの秘訣は酵母の力。まずは味噌汁で味わってみたいですね。