子どもの“分からない” から
授業をデザインする
- 口分田 政史
- KUMODE Masafumi
- 教育学部 講師(数学教育学・教授学習心理学)
Profile
1985年、滋賀県生まれ。 2010年、京都教育大学大学院教育学研究科修士課程修了。2021年3月、放送大学大学院文化学研究科博士課程修了。京都府内高等学校非常勤講師、滋賀県公立小学校教員、東京未来大学こども心理学部講師を経て、2018年4月より本学教育学部講師となる。
研究者詳細ページ
テストは解けるけど分かっていない
次の問題を考えてみましょう。マッチ棒で作った2つの図形の広さを比べる問題です。私の調査では,小学校4 年生の69%が「広さは同じ」と答えました。この問題は大学生の約6割も「広さは同じ」と答えることが確認されています。しかし正解は「Aの方が広い」です。公式の意味を理解していれば簡単に解けるこの問題を、なぜ大学生までもが間違ってしまうのでしょうか。小学生は生活の中で経験したことを通して広さを理解していますが、面積の概念的理解は曖昧です。この調査結果が示しているのは、図形の面積と周囲の長さとを混同している実態です。長さの概念と比較させながら面積の概念形成を促す指導が大切になりますが、実際の指導では公式を丸暗記させ、テストで良い点を取らせることに重点が置かれがちです。その結果、面積の概念的理解は曖昧なままとなり、大学生になっても間違ってしまうのです。
算数・数学のファンを増やしたい
私は“分からない” の要因となる子どもが持ち合わせている誤った知識「素朴概念」を質問紙やインタビュー調査を通して解明し、それを修正するための授業をデザインする研究を行っています。算数・数学が分からないのは、自分の能力のせいだと思っている人が多いと思いますが、そんなことはありません。そこには何かしらの理由が存在します。私はこうした子どもなりの理解と向き合うことに興味を持ち、現場の教員を目指しました。小学校の教員になり、大学院で行った研究を活かして教室で教えていると、先輩の先生方には「教科書通りに教えなさい」とよく怒られました。しかし研究すればするほど、算数・数学の分からなさは子ども一人ひとり違っていて教科書通りにはいかない実態を目の当たりにしました。子どもなりの理解の様相を解明したいという気持ちが強くなり研究者となりました。大人でも苦手意識をもつ人が多いですが、こうした研究を通して世界中に算数・数学好きの子どもが増えればと願っています。
北アルプス「燕岳」山頂で見た絶景! 登山が好きで、登頂した記念にピンバッチ集めも楽しんでいます。