ドイツの政党政治から
日本を見つめなおす
- 横井 正信
- YOKOI Masanobu
- 国際地域学部 教授(政治学)
Profile
1957年、滋賀県生まれ。1986年、京都大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。1986年、京都大学法学部助手、1989年、福井大学教育学部助教授、2001年、同大教育地域科学部教授、2016年、同大国際地域学部教授となる。
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日独の政党政治の現状
日本とドイツは、先進国の中でも二度の世界大戦を経て議会制民主主義が定着するなどの点で歴史がよく似ています。西ヨーロッパ諸国では、20世紀前半を中心に強固な組織と多数の党員を有する大政党が台頭しましたが、近年、ドイツでは大政党が勢力を衰退させ、「多党化」が進むと同時に、選挙のたびに投票する政党を変更する有権者が増加しています。対して日本は自由民主党が長期政権を維持する「一党優位政党制」の状態が見られます。一見、対極にあるように見えますが、比較政治学の視点からは別の姿が浮かび上がってきます。
相対的に比較し本質を捉える
2017年の衆議院選挙の結果を見ると、自民党は議席占有率では約61%となり、特に小選挙区では4分の3の議席を獲得して圧勝しましたが、得票率では比例代表区で約33%、小選挙区でも約48%と過半数に達しませんでした。また、自民党と比べるとはるかに小さいものの6つの政党が議席を獲得する一方、投票率は約54%へと低下しました。どうやら、日本でも実はドイツと同じように、特定の政党を強く支持する有権者の減少が起きているということです。
有権者の政党支持という観点から日独を比較しましたが、どちらが優れているかという問題ではありません。比較政治学では、複数の国で、時代ごとに社会経済的背景を相対的に比較、分析することにより、政治的構造の本質を客観的に捉えることをめざしています。例えば、様々な国において長期政権を維持している政党は変化がないように見えがちですが、多くの場合、時代に合わせてダイナミックに変化してきていることがわかっています。
留学前には渡航先の国について学ぼうとしますが、実際に行ってみると、留学先では、歴史など日本のことを逆に聞かれる場面が多いでしょう。留学は自国と他国を比較し、日本、あるいは自分を深く理解することができる格好の機会です。
ドイツは西部や南部を中心としてクリスマスマーケットが盛んです。私も大好きなので、訪れるとついつい心を引かれ木彫りの人形などを買ってしまいます。