素粒子をとりまく
力を探求する
- 佐藤 勇二
- SATO Yuji
- 工学部 准教授(物理学)
Profile
1997年、東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。プリンストン大学、高エネルギー加速器研究機構、筑波大学を経て、2019年、福井大学工学部物理工学科准教授。この間、日本学術振興会海外特別研究員、インペリアルカレッジ・ロンドン Academic Visitor。
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全ての現象は4つの力による
物理学は「自然」の成り立ちを探求する学問です。この「自然」とは、みなさんが身近に見ている山や川だけではなく、巨大な宇宙全体から原子・原子核などの小さな世界まで全てのことです。「自然」の最も基本的な構成要素が素粒子です。素粒子の世界の現象は加速器という実験装置で調べることができますが、私が専門とする素粒子理論は、素粒子、そして自然の成り立ちを理論的に研究する分野です。
素粒子を含む自然界の様々な現象は全て、重力、電磁気力、弱い力、強い力の4つの力によるものと考えられています。そのうちの重力以外の3つの力は量子力学と特殊相対性理論という2つの枠組みで理解されています。私は量子力学に基づいて残りの重力も統一的に理解することができる、量子重力理論の構築を目指した研究を進めています。
重力を含む4つの力の統合
重力の理論である一般相対性理論は、ブラックホールや重力波などの天体・現象を予言します。この一般相対性理論と小さな世界の量子論を統合することは物理学の大きな目標の一つであり、世界中で研究が進められています。その理論の有力な候補として、素粒子は大きさを持たない点の粒子ではなく、実は非常に小さなひも(弦)であると考える「弦理論」があります。この弦理論に基づいて量子的にブラックホールを考えてみると、性質を知ることが困難な「力の強い」場合の素粒子の理論と「力の弱い」重力の理論が結びつくことがわかってきました。この関係を用いると、通常はスーパーコンピューターによる大規模な数値計算を必要な力が非常に強い場合の素粒子の性質も、重力の理論側から“紙と鉛筆” による計算で調べることができます。
私も最近の共同研究で多くの議論を重ねながら、力の強い場合に素粒子同士が衝突したときの「素粒子の散乱」の確率を求めました。こうした素粒子、重力の未知の性質の研究を進めながら、もっとも基本的な自然の成り立ちを探求していきたいと考えています。
福井に来てから移動手段が徒歩、えちぜん鉄道だけでしたが、折りたたみ自転車を買いました。快適です。