アレルギーに苦しんでいる
子どもたちに明るい未来を
- 大嶋 勇成
- OHSHIMA Yusei
- 医学部 教授(小児科学、アレルギー)
Profile
1961年、石川県生まれ。1993年、京都大学大学院医学研究科博士課修了。1985年、兵庫県立塚口病院などで臨床研修、1993年、福井県立病院、国立療養所南京都病院、1995年、カナダ・モントリオール大学付属ノートルダム病院アレルギー研究室を経て、1998年に福井医科大学医学部小児科学(現福井大学医学部小児科学)に勤務。2010年より現職。
研究者詳細ページ
成長とともに病態がかわる
私たちの体には、細菌、ウイルスなど体にとって有害なものを異物と認識して攻撃、排除する仕組みがあります。これを「免疫」と呼んでいます。アレルギーは、本来は体に無害なものである食べ物などに対して反応し、自分の体を傷つけてしまう過剰な免疫反応です。
アレルギーのある子どもたちには、「アレルギーマーチ」と言って成長とともにアトピー性皮膚炎や食物アレルギー、ぜん息など異なる症状が次々と出てくる傾向があります。なかでも食物アレルギーの子どもたちが増えており、症状によっては生命にも関わる重要な問題になっています。かつては、原因食物を摂取させない「食物除去」が治療の主流でした。しかし、食物アレルギーの考え方が変わり、原因食物を少量ずつ摂取させ、食べられる量を増やしていく試みが行われます。摂取が可能な量を積極的に増やすため経口免疫療法が試みられていますが、重篤なアレルギー症状が起きる危険性が問題になっています。
未来を担う子どもたちのために
現在、私はより安全な免疫療法の開発に向けて研究を進めています。原因食物を直接食べるのではなく、その原因食物の成分等を含んだナノ粒子にし、ごく少量を皮膚に投与、アレルギー反応をおこさずに免疫の働き方を変える免疫療法を検討していす。免疫の働き方を変えることにより、原因食物を摂取しても消化管の粘膜でおきるアレルギー反応を抑制することで、食物アレルギーを克服することを目標にしています。
いつかは、食物アレルギーだけでなく、ぜん息など他のアレルギー疾患の本態に迫って、完治につなげられる免疫療法を確立したいと思います。
研修医の頃、ぜん息に長期にわたって苦しみ、命を落とす子どもたちの診療に携わりました。この子たちの未来を救いたいとの思いが、小児科医を目指したきっかけです。 子どもたちが将来、これらの病気に苦しまなくても済むよう支えて行く過程が医師として成長できる、それが小児科医の醍醐味だと私は考えています。
出張時の新幹線の中や待ち時間の間で読書するのが楽しみです。
歴史ものなどを、いろんな図書館をはしごして借りています。