波﨑 由美子

AYA世代の
がん患者さんに寄り添う

  • 波﨑 由美子
  • NAMIZAKI Yumiko
  • 医学部 教授(育成期看護学、乳がん・子宮がん)

Profile

1966年、福井県生まれ。2010年、福井大学大学院医学系研究科修士課程看護学専攻修了。12年間県外の病院にて助産師として勤務後、帰郷。2004年、福井大学医学部看護学科母子看護学・助産学領域助教、2012年、同学科講師、2017年、教授となる。現在、大阪医科大学大学院医学系研究科看護学専攻博士後期課程在学中。
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治療後にも続く人生とは

AYA世代って聞いたことありますか?英語の「Adolescent and Young Adult(思春期から若年成人)」の頭文字が語源の年齢層。15〜39歳という定義もあります。進学や就職、恋愛などに悩み、親元を離れ、結婚、子どもができ、子育てへ、と一生の中でも大きな変化を迎えるこの時期にがんにかかった人々を、男女を問わずいかに看護、支援すればいいのか、という研究をしています。

将来、子どもができる可能性を「妊孕性」と言い、例えば子宮頸がんになったとき、子宮を摘出すれば、がんは根治しますが、妊孕性は完全に失われます。妊孕性(にんようせい)を温存するため摘出しない選択肢もありますが、再発のおそれもあります。子宮のがん以外のがん治療でも抗がん剤や放射線の影響で妊孕性は損なわれます。これから子どもができる世代のがん患者は、治療の選択にあたって重い意思決定を迫られます。がんが不治の病でなくなった今、治療後にも続く人生を考えなければならないのです。

患者さんの意思決定を支える

患者を中心とした領域を越えた連携の考え方

厚生労働省の調査で2015年、40歳未満のがん患者のうち妊孕性温存の選択肢を知らされたのは4割に満たなかったというデータもあり、まず情報が提供されなければいけません。また患者は、結婚を控えていたり、すでに子どもがいたり、病状以外の状況もさまざまで、意思決定にはたくさんの要素がかかわります。

現在、研究はがん治療を経験した患者に協力してもらい、一人ずつ面接してどんな看護が必要だったか事例を集めているところです。これまでの研究で男性を含む小児がん治療経験者への面接結果をまとめたところ、経験者は「恋愛に踏み込めない」などと悩み、一方で「がんだったからこそ分かる、支えてくれる人の存在」を実感していることが確認されました。看護のあり方のヒントになります。将来的には、がん、生殖医療など領域を超え、看護師、医師らが連携して、患者の意思決定を支援する体制づくりを目指したいと思っています。

It's My Favorite!

一昨年、看護学科の玄関で見つかったネコと同居しています。名前は、ある先生から一部を拝借して「ともぞう」。一緒にいると癒やされて、自分でもびっくりするくらい生活の一部になっています。