繊維の世界多彩な分野で活躍する新しい素材へ
霧のように見えますが、今、世界中で様々な研究開発が進められている素材。再生医療の本命、iPS細胞(人工多能性幹細胞)が、体の臓器や組織に培養するための「足場」になるものを目指し、生糸をナノファイバーにしているところです。産学官の連携や地域との協働活動をまとめるため、本学に今年度、発足した「繊維・マテリアル研究センター」で開発研究を予定するテーマの一つです。
iPS細胞は、どんな臓器や組織にもなれる潜在能力がありますが、医療に使うには実際に臓器などの構造、形になったものに培養しなければいけません。臓器は本来、立体的なものですが、世界的にも実用化の見通しが立っているのはまだ平面状。そこから立体的なもの、例えば血管なら少なくとも管状の形にしていくためにiPS細胞が増殖する足場の素材がカギとなる訳です。繊維・マテリアル研究センターの山下義裕教授は、本学の強みの繊維研究を背景に、日本古来の繊維「絹」の元となるタンパク質から足場の素材を作る革新的な研究を目指しています。
山下教授の研究構想には、さらにウレタンのナノファイバー技術を応用しインフルエンザウイルスやPM2.5など微細な粒子を留める機能と通気性を両立したマスク素材の開発、炭素繊維を素材として一歩進んだシートなどへ製品化するプリプレグ技術の開発、導電性繊維のさらなる応用といった柱があります。
福井大で始まる、新しい繊維とマテリアルの世界に乞うご期待です。