正解のない問題を考える
主権者教育の大切さ
- 橋本 康弘
- HASHIMOTO Yasuhiro
- 教育学部 教授(社会科教育・公民教育)
Profile
1971年、広島県生まれ。1995年、広島大学教科教育学専攻博士課程前期修了。1995年、広島県立高等学校教諭、2001年、広島大学附属福山中・高等学校教諭、2002年、兵庫教育大学学校教育学部助手、2004年、福井大学教育地域科学部助教授、2015年、同学部教授、2016年、同大教育学部教授となる。
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身近な社会の問題を考える
2019年4月、東京・池袋で高齢ドライバーによる大事故がありました。このような事故が起こるたび、認知、身体能力が衰える高齢者は運転免許の返納を義務化すべし、という論議が持ち上がります。でも、運転できなければたちまち日常生活に困る高齢者もいます。この主張に賛成、反対双方の立場から討論(ディベート)の基礎となる教材を学生らと考え、新しい高校教科書の内容に発展させられないか検討しています。皆さんの考えはどっちですか?
私は「主権者教育」はどうあるのが良いか、を研究しています。平成28年の参院議員選挙で「18歳投票」が始まって以来、注目されているテーマです。若い世代ほど投票率が低いことなど、社会や政治に無関心な若者への対策として期待されるからです。しかし、投票を促すだけが主権者教育ではありません。先に紹介した高齢者の免許返納義務化など、身近な社会の問題も主権者教育のテーマだと考えています。
見方・考え方を認め合う
免許返納問題は、交通機関の発達した都会では賛成が多そうで、車がないと不便な過疎地は反対が大半でしょう。双方、見方や考え方を認め合った上で議論する。どちらかを一方的に「正解」とするのでなく、困る人を救う仕組みも考え、折り合いを付けなければいけません。これを「地域間の公正」を考える問題と呼んでいます。
さらに私が研究を進めているテーマに、地球温暖化の問題があります。今の世代の所業が気候変動などで後の世代に影響する「世代間の公正」の問題でもあり、当事者が話し合える地域間公正より難しい。この問題でも、どんな対策を採るべきか立場に分かれて討論する基礎資料を研究していて、講義では討論の実習をしています。
違う意見にも十分、耳を傾け、自分の意見を論理的に展開する訓練を重ねることが、社会的・政治的な問題を考える力を養います。それが主権者教育だと指導しています。
スーパーマーケットの業界誌にハマっています。社会科の参考にと読み始めたのですが、「売れ筋商品は目の高さに」といった棚の配置ルールなど、流通業界の内情をのぞき見られて楽しい。