お肌の世界
緑色の流れるような陰影。これは皮膚に塗ったセラミドが角層に残る様子を観察したものです。お肌の潤いにはセラミドが欠かせません。肌は、上から表皮と真皮、皮下組織からなり、セラミドは、表皮中の角層(図中SC)で水分と脂質の層をつくり潤いを保ちます。画像はラットの角層に蛍光標識したセラミドを塗布し顕微鏡で皮膚内部を捉えたものです。セラミドを塗布した12時間後には正常な皮膚より、ドライスキンの方がよりセラミドが多く残っていることがわかります。
つまり、お肌にはスキンケアが欠かせないのです。医学部看護学科の青木未来助教は、臨床現場でデリケートな高齢者の皮膚を多く診てきました。なかでも深刻だったのは、皮膚の機能不全が重篤化する「皮膚粗しょう症」という症状です。皮膚粗しょう症は、ステージ1から4まで症状が分類されていますが、ステージ2では医療テープの剥離時などに皮膚裂傷が起こり、最終のステージ4では強い痛みが生じる血腫や壊死が起こってしまいます。高齢者に健やかな生活を送ってもらうために、ステージの前段階「ステージ0」の概念を提示し、未然に防ぐためのスキンケアの在り方を研究しています。
青木先生は、「適切なスキンケアを行うためには、ステージ0の皮膚の評価方法とパラメータの確立が重要。今後より一層詳細かつ簡便に評価・検出するためにAIなどを用いて自動判別できるシステムの構築が望まれます」と話しています。
今後、皮膚を採取しなくても皮膚内部を観察する方法や、高齢者の皮膚にやさしい保湿剤を開発・製造されている協力企業を募集しています。