飯田 健志 先生

環境問題の解決策を 経済学の視点から探る

環境はタダ?経済と環境の問題とは

環境問題はなぜ起こるのか。経済学の観点では「環境がタダ(=0円)として扱われているから」と捉えます。例えば、企業が技術を開発して環境を守っても、直接的な利益にはなりません。逆に言えば、環境のことを考えず、生産を拡大した方が企業の利益になるのです。けれども、今や経済活動と環境問題を切り離して考えることはできません。解決策を経済と環境のバランスを取りながら考えるのが環境経済学です。私は、経済活動の一つである貿易に焦点を当て、国や企業を想定した理論研究をしています。
先進国と途上国の企業が、途上国の市場で競争していると仮定します。両国の企業は自らの利潤を最大にするべく商品の生産量を決め、途上国の政府は、消費者の満足度や自国企業の利潤、政府の税収、環境損害額などから算出される、社会全体の満足度(社会厚生)が最大になるように関税率を決めます。企業や政府の目的や思惑が、互いにどのような影響を与えるのかを数式で表すことで、社会厚生を数値として見ることができます。
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数学的モデルに表しWIN-WINの関係を目指す

商品を生産する過程で、地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの二酸化炭素が排出されますが、先進国はそれを低減する技術を持っています。私は、経済発展と環境保護が両立する、持続可能な社会の実現には、先進国の環境技術をいかに途上国に移転するかが重要で、環境技術の特許など、知的財産権を守る必要があると考えています。様々な貿易政策を想定したモデルを作り、社会厚生の大きさを比較して、先進国と途上国、双方がWIN-WINになる結論を導き出そうとしています。
一般的に、自由貿易は社会厚生を改善すると期待されていますが、知的財産権の保護の視点を追加して分析すると、途上国での知的財産権の保護が弱く、技術が盗まれやすい場合、保護主義的な関税政策を採用した方が、社会厚生が改善するという結果が得られました。そこから、自由貿易の下で環境技術の移転を促進して経済と環境の両立を実現するには、知的財産権を保護する制度の整備が必要と結論付けました。
近年、欧州特許庁を窓口とした、世界中の特許のデータベース(PATSTAT)ができたので、今後はそのデータを使い理論を裏付けるような実証研究も行い、有用性の高い理論モデルを作ることが目標です。
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fp33_15p-4ハマっていること★

自転車に乗ると小回りがきくので、街中でさまざまな出会いをします。春には妻と一緒にサイクリングに出かける予定です。