里村 武範 先生

ありえない!ところで生きる微生物 驚きの生命力を工学に

並み外れた耐性

みなさんが100度に沸騰した熱水に手をいれたなら、皮膚が白くなって、火傷になりますね。これは皮膚のタンパク質が熱で変性するためです。しかし、地球上には生命が存在できるとは到底考えられないような高温の環境にも生物が棲息しています。1982年にイタリアのヴルカーノ島で発見された「超好熱菌」という微生物です。溶岩と海水が混ざり合う200度の硫気孔付近に棲む超好熱菌が生産するタンパク質は、熱に強いだけでなく、酸性やアルカリ性の環境に対して耐性をもっていたのです。なぜ、超好熱菌は、このような高温を好むのだろうか?私たちの生活に役立つようなヒントがあるはずです。
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一体、何が違うのだろう?

 
日本は世界有数の火山国。すぐ近くに高温環境がたくさんあり超好熱菌の宝庫です。新しい超好熱菌を見つけるために温泉地に出かけ、90度を超える熱水や土壌を採取し、超好熱菌から、高温でも茹で上がらない酵素を探しています。ちなみに私たち人間も超好熱菌と同じ酵素を持っているのに、何が酵素の耐熱性にかかわっているのでしょうか?それを調べるためにこの酵素の立体構造を解析し、人間などが持っている酵素の構造と比較することで、どの部分に耐熱性の秘密が隠れているのか明らかにしたいと考えています。

〝電気になる〞超好熱菌

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超好熱菌の酵素は、電子顕微鏡でも観察できないくらいのナノサイズでありながら、高温だけではなく室温でも安定して働きます。この性質を利用して電池に応用しようと考えています。この超好熱菌の酵素で出来た電池は「酸化還元酵素」という酵素の一種を電極に固定し、生物の持っている化学エネルギーを電気エネルギーに変換します。この超好熱菌の酵素を使った電池は現在の乾電池と違い、重金属などは含まれていません。環境に優しいクリーンな装置です。
地球以外では生命が見出されていませんが、もし、宇宙に生命が存在するとしたら「超好熱菌」のようなユニークな性質を持っていると考えられています。今は、温泉地で超好熱菌を探していますが、将来は宇宙で!という夢を抱いています。

fp33_14p-4ハマっていること★

好みの味のものがなかなか見つからなかったので、自作で餃子を作って食べてます。皮から作りたいのですが台所が粉まみれになるので自粛して今はタネのみで我慢してます。