英語を通じて「こころ」のメカニズムを解明
- 教育学部(英語学) 准教授
- 中村 太一 先生
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言わなくても通じる英語の不思議
「英語学」とは、英語という言語がどのような仕組み、規則・法則によって成り立っているかを科学的な手法で研究する学問です。イメージしやすいところでは、中学校や高校で学ぶ英文法にあたるものなどが研究対象です。古代ギリシアの哲学者アリストテレスの時代から、言葉は、音と意味を結びつけると言われていますが、音が欠けているのに意味が通じる「省略現象」が存在します。例えば、「Can you play the guitar ?」という問いへの回答「Yes,I can.」には「play the guitar」が省略されています。音がなくて不完全な感じがするのに、省略部分が頭の中で復元され、自然な表現として認知されることに興味を持ちました。
一般的には、先に発せられた内容と一致する場合は省略できるのですが、異なっていても省略できる場合があります。私は、「省略現象」について、どのくらいのズレなら省略できるのか、また、どういう時にどのくらい省略され、復元が可能なのかを研究しています。
こころの働きをとらえよりシンプルな説明を目指して
日々の研究は、英文データを観察することから始まります。新たに見つけた省略現象などの規則性について、既存の分析を用いて、省略されているのになぜ意味が通じるのかについて説明を試み、時には新しい分析を提案します。また、英語の基本的な文法や省略部分を考慮して作文し、ネイティブの人に母語として自然か、不自然かを判断してもらい、分析することも。最近では、分析の妥当性を検証するために、書き言葉や発話を収集しデータベース化された言語資料「コーパス」や英語版の「青空文庫」を利用することも多いです。
このように説明すると、非常に地道な研究に思われるかも知れませんが、言語学の研究を突き詰めると、発話やその意味・意図を理解する「こころ」の働きの解明を試みることにつながります。言語は、他の動物には見られない、人類固有のものであり、また、ある一定年齢を越えると習得が困難になるともいわれ、特殊性のある分野です。省略部分を頭の中で復元し、内容のあるものとして認識することを可能にする、英語の母語話者が「こころ」に持つ復元及び認知のメカニズムを明らかにすることで、英語習得の近道が見つかるかも知れません。シンプルなメカニズムの構築を目指し、研究していきたいと考えています。
自分のペースで継続的な学習を
小学校から英語の授業を取り入れるなど、国は英語教育に力を入れています。英語は、職種を問わず必要になっており、今の時代を生き抜くためにも欠かせません。学習継続の秘訣は、負担にならない範囲でやることです。モチベーション維持のため、友達と一緒に勉強するのも有効です。
何より、自分が知らない街のコミュニティを知り、新たな人との繋がりが生まれたら、キャンパスライフもずっと楽しくなりますよ。
今ハマっていること★
もうすぐ2歳になる娘にハマっています。日々成長し、言葉を覚えていく様子を見ていると、父親としても言語学者としても興味が尽きません。